その存在そのものが
それから数日。キコリはオルフェやドドと共にフレインの町周辺に発生するデモン狩りを行っていた。
「来るぞキコリ!」
「ああ、ドド!」
キコリたちに向かい走ってくる「ワイバーン」でも「ドレイク」でもないモンスターたち。
地球で呼ばれる恐竜と呼ばれるものに似ているソレ等はしかし、この世界には存在しないモンスターであり、どうやら人類の間では「ディノ」と呼ばれ始めたらしい。
ディノは存在……生まれ方含む種族全てがデモンであるのだが、人類からすればそんなものは知る由もない。
そしてキコリたちも同じだ。襲ってくるのだから倒すしかない。
「ぬ、おおおおおおおお!」
突進してくる四足歩行の角付きディノをドドの大盾が多少押されながらも防ぎきる。
ギリギリと音の鳴る盾は、しっかりと角付きディノの突進を受け止めたのだ。
そしてそこに、横に回り込んだキコリの斧が角付きディノの首へと深々と突き刺さる。
いや、それだけではない。ドラゴンの爪でもあるその斧は角付きディノの首をそのまま跳ね飛ばし、遅れて走ってきた小型ディノへと斧を向ける。
「フレアウェイブ!」
「ギャギャー!?」
だが、キコリが飛び掛かる前にオルフェの放った炎の波が小型ディノたちを焼き尽くす。
「ま、こんなもんね」
「ああ。しかし……だんだん増えてきてるな」
「これもゼルベクト、の影響なのか」
そう、ドドの言う通りにこれはゼルベクトの影響なのだろう。この世界に近づいてくるという証明であり、尺度であるのだろう……段々と増えていくディノたちは戦闘力が高く、普通のモンスターでは討伐に苦労するのがなんとも嫌な話ではあった。
「ゼルベクトの影響だとして……倒したらディノは消えるのか?」
「消えないでしょ」
そんなキコリのふとした疑問に、オルフェはアッサリとそう答える。そう、ディノは暴走した大地の記憶の生み出したモンスターだ。
ならばゼルベクトの影響で数や出現頻度が増減することはあっても、消えることはないだろう。
何故なら、もう生み出されているのだから。
「……ゼルベクト、か。倒さないとな」
その存在そのものが世界を破壊に導いていく。破壊神の名に相応しい力だろう。
倒すのが遅れれば遅れるほど、ゼルベクトの影響が大きくなっていく。
前回は完全な状態のシャルシャーンが戦ってなお、これほどの影響が出ているのだから……今度の戦いで手間取ればどんなことになるか、わかったものではない。
だからこそ現存するドラゴンたちが全員集まった。けれど、それでも。
それでどうにかできるのか。世界に影響を与えないうちに倒せるのか。
それだけが、キコリは不安だった。
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