覚悟はしておけ
「それで? この後はドンドリウスにでも会いに行くのか」
「ああ。あとは楽園のデスペリアってドラゴンにも会えたらいいんだけど」
「奴については気にするな。一番やる気のないドラゴンだ」
『そうですね。会いに行く時間が無駄です』
ヴォルカニオンのそんな言葉に、ユグトレイルも頷くように思念を送ってくる。しかし会ったことのないキコリとしては「そこまで言われるほどなのか」といった感じではあるのだが……ヴォルカニオンが言うのであればその通りなのだろうとも考えていた。
「まあ、2人がそう言うのなら」
「そうしろ……ん?」
何かに気付いたように視線を向けるヴォルカニオンの、その視線の先。翼を広げ飛んでくるドンドリウスの姿があった。
「チッ……燃やすか」
「いや待ってくれ。ドンドリウスだって味方だろう?」
「あんなのを味方だと思ったことはない」
「何をゴチャゴチャと騒いでいる」
そうしている間にもドンドリウスは壁の上に降り立ち、キコリに視線を向けてくる。その視線は、以前会ったときのような敵意に満ちたものではない。
しかし、同時に決して好意もその瞳には存在しない。キコリを観察するような視線は、やがてふいと背けられる。
「フン。前に会ったときは悪かったな」
「いや、別に構わないさ。ゼルベクトの力の影響もあったんだし……今はこうして力を貸してくれてるんだ」
「その話だが……シャルシャーンの奴が私たちを集めた理由が分かった」
ドンドリウスがそう言うと同時に、フレインの町の外で爆発音にも似た音が響く。
「な、なんだ!?」
「貴様の仕業か、ドンドリウス」
「そうだ」
爆発音のした方向には巨大な三角錐の如き柱が隆起しており、その先には恐らくはデモンと思われる大型モンスターが刺さっていた。しかし……キコリはそんなモンスターに見覚えはない。
「アレは……?」
「デモンだ。だが……知らないモンスターだな」
「ふむ、記憶にないな」
『暴走した大地の記憶が生み出したものでしょう。ふふふ……これもまたゼルベクトの影響、ということでしょうか』
ユグトレイルの面白がるような言葉にドンドリウスが頷く。
「そうだ。月の満ち欠けが海に影響するように、ゼルベクトの接近が暴走した大地の記憶に影響しだしたのだろう。つまり……」
「ゼルベクトとやらの尖兵が大地を満たす可能性がある……か?」
「そうだ。決戦の地は、ゼルベクトの尖兵で埋め尽くされるだろう」
……それはなんとも恐ろしい話だろう。キコリのいる場所に、ゼルベクトが現れ、その尖兵が溢れ出すというのだから。
「覚悟はしておけ。その日はどうやら……思った以上に近いぞ」
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