結局始まりは

「予想?」

「おう。たぶんだがな、此処に来るぞ」


 その言葉に、全員が明らかに動揺する。何処に来るか、ではなくて此処に来る。

 アイアースがそれを予測できるというのであれば、その理由は2つしかない。つまり。


「俺とドラゴン。どっちかを目印に来るってこと……いや、違うな。俺か」

「ああ。そういうことだ。ゼルベクトは間違いなく『同じ力を持つ』お前を目印にするだろうさ。シャルシャーンの狙いもたぶんソレだ。来る場所を確定させることで被害を最小限にしようとしてる」


 納得のいく話ではあった。破壊神の生まれ変わりであるキコリに、その力の欠片を入れる理由。それは同じ存在であるゼルベクトがキコリを見つけるという確信があるからだろう。

 しかし、そうだとすると……この場所にいるのは拙いのではないだろうか?


「だとすると、俺は此処に居ない方がいいんじゃないか?」

「もうすぐ来るかも、ってだけで野生に帰る気か?」

「いや、でも。それでもだな?」

「心配要らねえよ。シャルシャーンの野郎がクズの域超えてるんでなけりゃ、そのときには知らせに来るだろうよ。そうしたら移動すりゃいい」

「信用できるの?」


 あまりにも当然すぎるオルフェの問いに、アイアースは「信用はしてねえ」と答える。


「アイツのドラゴンとしての矜持だけを信じてるだけだ。余計な被害は出さねえってな」

「そこは信じてくれていいよ」


 突然その場に現れたシャルシャーンにオルフェが間髪入れずに光線を放ち、シャルシャーンはアッサリ弾く。


「どの面下げて出てきたのよ! このクズ!」

「御挨拶だなあ。まあ、とにかくゼルベクトについては常に観測している。近づいてきたら分かるから、そのときには教えると約束しよう」

「シャルシャーン」

「ん? なんだいキコリ」


 キコリは立ち上がり、シャルシャーンの眼前に立つ。睨みつけるその視線に、シャルシャーンは涼しい顔だ。


「直接聞かせてくれ。何処から何処までが計算だったんだ?」

「君が生まれ落ちたその瞬間から。ただ、君が排斥されたのは君の愚かさと、村の人間の愚かさが合わさった結果だ。そこにボクは何1つ関わってはいないよ」

「……そうか」

「ちょっと、殴らないの? こいつ、ほんとのクズじゃない」

「殴らない」

「なんでよ」


 殴れ、とでも言いたげなオルフェに苦笑しながら、キコリは答える。


「結局始まりは、俺が馬鹿で排斥されたって話なんだろ? もう両親の顔なんて覚えてないけど……俺がしくじらなければ、そのときは」

「君がこうなるように仕向けただろうね」

「そうだったら、俺はお前を殴ってたよ。シャルシャーン」

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