その光の示す方向
ヴォルカニオンに関しては、いったん約束したからには放っておいていい。
あとは自分で適切だと思う行動をとるだろう……アレはそういうドラゴンだとアイアースは知っている。
ならば次は「守護のユグトレイル」なのだが、事前にオルフェから聞いた情報とでは、恐らくもうダンジョン内の変化により場所が変わっている。
つまり事前情報一切なしということになるのだが……流石にそんな悠長なことはやっていられない。
ドンドリウスならば大地の記憶から探ることは出来るが、それがドンドリウスがおかしくなった原因である以上は頼めない。
当然ながらヴォルカニオンにそういうのを頼むのは間違っている。空間移動で「そういうこと」を出来そうなグラウザードはすでに死んでいる。と、なると……1人しかいない。
関わりたくないし出来ればブチ殺したいが、こればかりは仕方がない。
アイアースは大きな……とても、とても大きな溜息をつく。
人生……いや、竜生最大の溜息はこれだろうというくらいに大きな溜息の後に、アイアースはその名を呼ぶ。
「おい、シャルシャーン。出てこい、ユグトレイルが何処にいるか知ってんだろ」
その呼びかけに意外にも……本当に意外にも、その場にシャルシャーンの姿が現れる。
やっぱり今まではわざと出てこなかったな、と言いたいのをひとまず飲み込んで、アイアースは思いきり舌打ちする。そこまでは我慢できなかったが仕方がない。
「君がボクに頼ろうとするとはね。意外だったよ」
「この状況も想定してんだろ。さっさとユグトレイルの場所を教えやがれ、この悪役が」
「くっくっく……君も変わったよ。それもキコリの影響なんだろうけど」
「黙れカス。お前がキコリを語るんじゃねえ。さっさと質問にだけ答えて消えろ」
言われてシャルシャーンは肩をすくめると緑の光の珠のようなものを生み出し浮遊させる。
それはふわふわとアイアースの側に飛んできて、1つの方向へ向けて光を放つ。
「……なんだこりゃ」
「その光の示す方向に行くといい。それで辿り着くだろう」
「そうかよ。気に入らねえがまあ、貰ってやる」
これをシャルシャーンが作ったという事実1つで叩き割りたくなるのをアイアースは我慢する。
キコリのためのものだと思えばこそ、だ。アイアースがシャルシャーンを嫌いなのはエゴではないので、まあ我慢すれば耐えられる。
そう自分を納得させていると、自分を見ているシャルシャーンに気付きアイアースはキレそうになる。
「何見てんだカス! 消えろ! それでも今死にてえか!」
笑いながら消えていくシャルシャーンを見送りながらアイアースは「やっぱ次は殺そう」と考えていた。
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