次は誰に

「それで? この後どうするつもりだ?」

「どうするもこうするもねえよ。お前も分かってんだろ?」

「……まあな。君も元々そのつもりだったのだろうが……」

「おう。他のドラゴンに会いに行く」

「やはりな。君が私に会いに来た時点でそうだろうとは思っていた」


 そう、アイアースは元々そのつもりだった。今後どう事態が推移していくにせよ、他のドラゴンの助けがあれば大分状況は違ってくる。

 現在存在しているドラゴンは6体。

 不在のシャルシャーン。

 爆炎のヴォルカニオン。

 守護のユグトレイル。

 創土のドンドリウス。

 そして海嘯のアイアースと死王のキコリ。

 このうちシャルシャーンは除外するとして、ドンドリウスとは今会っている。

 ヴォルカニオンとユグトレイルについては……まあ、どうにかなるかは……分からないが。


「キコリをサポートできる体制を作る。あいつはもう充分すぎるほどに戦った。もういいだろ」

「破壊神ゼルベクト……か。シャルシャーンの性急さを見るに、そのときは近いのかもしれないな」

「どうでもいい。キコリはもう限界を超えすぎた。あいつが何をしなくてもいいようにしなくちゃならねえ」

「……まあ、迷惑をかけたからな」


 言いながら、ドンドリウスは先程のシャルシャーンのことを考える。

 

(先程のシャルシャーン……あの態度はわざと、か? 憎まれ役になって、此方の動きを誘導する……最後のわざとらしい挑発はアイアースをわざわざ焚きつけるためだとして。ふむ……しかし、そうだとするとゼルベクトは……それでも破壊竜とかいうモノを担ぎ出さなければならないほどに強い、と……?)


 可能性はある。破壊竜と他のドラゴン。それを全部含めて破壊神ゼルベクトに勝てるとシャルシャーンが見積もっているとするのであれば……なんとも舐められてはいるが、同時に「不在のシャルシャーン」という、かつての時代をよく知るドラゴンが破壊神ゼルベクトをそれだけ警戒しているという証でもあった。

 事実、その力の影響だけでドンドリウスはああなったのだ。本体ともなれば恐ろしい力を持っているのは確実だ。


「……アイアース」

「んだよ」

「覚悟はしておけ。これは止められない流れなのかもしれない」

「ふざけんなよ。流れをせき止めてブッ飛ばしてこそのドラゴンだろうがよ」


 あまりにも単純で愚かしいその言葉に、ドンドリウスはフッと微笑む。愚かしい。どうしようもなく愚かしい。しかし、今回ばかりは不快ではない。


「そうかもな。で? 次は誰に会いに行く」

「此処からの距離だと……ヴォルカニオンだな。あー……」


 その名前を口に出してから、アイアースは本当に嫌そうな表情になる。


「……あいつ、話は出来ても会話が出来ねえから嫌いなんだよなあ」

「安心しろ。たぶん向こうもそう思ってるからな。ああ、それと」

「なんだよ」

「……『楽園』の奴のことは覚えているか?」

「忘れてるに決まってんだろ。つーかお前は何で覚えてんだよ」

「思い出したなら会ってこい。最後でいいから。必要だろう」

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