君にしか出来ない対処法だな
「そうだな。私はアレを捨てたし、死んだと聞いて心の底から喜んだ」
嘲笑するシャルシャーンに、ドンドリウスは動揺することもなくアッサリと答える。
その様子にアイアースのほうがギョッとするが、ひとまず空気を読んで黙っていて。けれど、続く言葉はなんともドンドリウスらしいものだった。
「当然だろう? アレは人の罪の形だ。アレに組み込まれたおぞましい術式の数々は、人間というものの評価を見直すに値する罪の証拠だった。たとえ何かの間違いでドラゴンに到ったとして世界の守護者には絶対にならず、その「間違い」が起こらなければドラゴンに到るはずのないモノだ。それを理解した以上、殺すか捨てるかの選択しか私には残されていなかった」
ソイルレギオン。人間がドラゴンを人為的に作り出そうとして出来た怪物であり失敗作だ。
結果としてキコリが倒すことになったが、ドンドリウスの見る限りその製法には口に出すのもおぞましいような類のものが混ざっている。
そんなものがドラゴンとなる資格を得られるはずがないのだ。だからこそ、あまりにも愚かな罪の具現化であり……やはり、それをシャルシャーンが知らないはずはない。
「無駄な挑発はやめろ、シャルシャーン。君はそれで私が正気に戻っているか確かめているのだろが、それは君の悪い癖……違うな、今の君の悪いところだ。言ってみれば、君もまた正気ではない。当然だな、かつてゼルベクトをたった1人で引き裂いたのは君だ。その君自身が、死してなお残るゼルベクトの呪いの影響を受けていないはずがない」
「……」
シャルシャーンは無言。その反応に、アイアースは「その可能性」を考えていなかったことに気付く。
自分でも自覚しないうちにシャルシャーンというドラゴンの完璧さを信じていたのだろう。
しかし、その可能性……確かにある。いや、ないほうがおかしいのだ。
「その通りだよ、ドンドリウス。やはり正気に戻った君は頼もしい」
「自分を無限に等しい数に砕いたのは、その対策だな?」
「それも正解だ。ボクの中にいるゼルベクトの呪いに侵された部分を、長い時間をかけて取り除いている」
「君にしか出来ない対処法だな……では次にゼルベクトが来た時に戦うのは難しいか」
「援護は出来る。しかし、ボクが正面から戦うのは無理だね」
言いながらシャルシャーンは、アイアースへと視線を向ける。
「だからこそキコリを利用することに決めた。破壊神を破壊するドラゴンを。この世界のために破壊の力を振るう者を育てると決めた。少なくともそれで、『その次』はまたボクが戦えるだろうからね」
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