そんな君がボクを
そうして、アイアースから今までの経緯……次元城に関してはアイアースも聞いただけだという前提の話だが、ともかく経緯を聞いて、ドンドリウスは頭痛を抑えるような表情になる。
いや、実際頭痛がしているのだ。最初に何と言うべきかすら悩んでいる。それでも、なんとかドンドリウスは言葉をひねり出す。
「……なるほどな。そんなものが存在していたとは。これは私の不手際でもあるな」
「別にお前にゃ期待してねえよ。自分を高く見積もってんじゃねえぞ」
「フン。これはそういう話ではない。ドラゴンとしての役割の話だ」
そう、ドンドリウス……「創土のドンドリウス」は、大地から世界の情報を読み取る。
勿論前回のことがあってからは大地の記憶に触れないようにしているが、その能力で黒鉄山脈の中にあった次元城のことは気付けたはずなのだ。それなのに、気付けなかった。
理由は色々考えられるが……恐らくは大地の記憶がおかしくなっていることと関係があるのだろう。
「……しかし、色々と合点がいった」
「おうそうかい。勝手に納得してねえで解説しやがれ」
「結論から言えば、シャルシャーンはキコリを育てようとしている」
「あ? 何を分かり切ったことを」
「ただし、君が考えているような方向性ではない」
そういうことであれば、ドンドリウスとしては色々と納得がいく。恐らくシャルシャーンは全て分かった上で状況をコントロールしようとしている。
ドンドリウスとキコリが戦ったのも……シャルシャーンの計算の内である可能性は高いだろう。
「破壊神だ。シャルシャーンは、キコリを『こちら側』の破壊神……いや、破壊竜とでも呼ぶべき存在に育てようとしている。その先に見据えるものは破壊神ゼルベクトの再度の襲来……それで共倒れにでもなれば上々といったところか」
「おい、それじゃ……」
「間に合っていないのは、全部わざとだ。分からないのか? あいつは『不在のシャルシャーン』だぞ? 何処にでもいて何処にもいない……しかし、何処にでもいるんだ。間に合わないなんてことが有り得ると思うか? すぐそこに『居る』というのに! そうだろうシャルシャーン!」
言いながらドンドリウスは周囲へと魔力による圧を放つ。出されたコーヒーカップが激しく揺れて、シャルシャーンが部屋の隅に姿を現す。
「おいおい、乱暴だなあ。不在中のボクにそういうのは効かないって知ってるだろうに」
「シャルシャーン。君は長生きしすぎて後輩の育て方も忘れたか」
そのドンドリウスの言葉にシャルシャーンは目を丸くして……やがて面白そうに笑い出す。
「ハ、ハハハハハハハ! それを言うのかいドンドリウス! あのソイルレギオンだって上手く育てればいずれドラゴンに到る資格を手に入れた可能性も……まあ、万に一つもないけどあったかもしれないのに! 確かめることもせず放逐したのは君だろうに! そんな君がボクを責めるのかい!?」
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