投げ槍のようなもの
次元城の防衛機構が発動する前にレルヴァたちが脱出し、しかし次元城の再生も瞬間に終わる。
『ハ、ハハッ! 油断も隙もねえな! だが……』
「ブレイク」
以前、キコリは自分の飛び方を投げ槍のようなものだという話をしたが。つまるところ、安全性がどうとか速度がどうとか着地がどうこうとか。そういう通常であれば飛行するうえで当然のように考慮すべき全てを投げ捨てれば、相当の速度で飛行できるということでもある。
だから、今の一瞬でキコリは次元城に触れられる距離まで飛んでいて。破壊魔法ブレイクの力が次元城に伝わっていく。
『な、んなあああっ!? なんだこれは!』
ドラゴンとして使える魔力を惜しみなく注ぎ込んだブレイクは次元城を塵へと変えていき、再生の力と拮抗するように……いや、破壊の力のほうが上回っている。
それは当然だろう。直すよりも壊す方が簡単だ。直すという複雑な工程よりも、キコリのただ壊す工程のほうがはるかに魔力効率も良い。2つの力がぶつかり合えば……大抵の場合は、直すほうが間に合わない。
そう、結局のところはそうなのだ。ただ壊すと決めたとき、ドラゴンとして世界の魔力を振るうキコリの破壊力は人が対抗できる領域を大幅に超えている。
たとえドラゴンの中で最弱レベルの肉体を持っていようが、本人の魔力許容量を含め様々な分がカスであろうが、それだけは変わらない。
『死王のキコリ』というドラゴンは破壊力という点、その一点だけにおいては他のドラゴンと比べてもそん色ない……あるいは上回るほどの力を誇る。だから。だから、この戦いは。
「ギガントブレイカー」
キコリの斧を起点に、巨大な光の刃が現れる。それはキコリのオリジナル魔法の1つであり。次元城のような巨大なものを一撃で破壊するにはもっとも適した魔法。
『お、おい待て! このおおお!』
王都ガダントの人間を消した波動が広がり、キコリの鎧……キコリを守るレルヴァたちを消し去っていく。守りの消えたキコリをもそれは蝕んで。それでも、その刃は振り落とされる。
そう、この戦いは「どういう風に次元城が破壊されるか」という戦いでしかなかった。
だから、次元城は真っ二つに切断されて。その切断面からも流れ込む破壊の力が落下する次元城の欠片を、本体を……塵へと変えていく。
そうして消えていく次元城を見ながら、キコリはふうと息を吐く。
レルヴァたちがやられてしまったが、彼等はキコリと繋がっているから魔力さえ与えればすぐに再生できる。ルヴの斧もかなりボロボロだが……まあ、これも同じだ。その辺りはドラゴン装備と何も変わらない。
とにかく、戦いは終わった。だから地上に戻ろうとして……虚空の穴から生えてきた剣に、胸を貫かれた。
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