もう一撃

「人が居なくなってる……さっき報告にあった大量殺戮兵器か……!?」

「でも壊したんでしょ? なんで使えてんのよ!」

「直したってことか?」


 レルヴァたちの回答は「不明」だ。確かに破壊した。なのに使えている理由が分からないのだ。

 分からないが……それでも、分かることはある。それは恐らく王都ガダントにキコリたち以外の生き残りはもう居ないということだ。

 この広い王都から一切の音が消えた……それはつまり、そういうことだろう。

 だが、ドルヴァン七世は何故突然、そんな凶行に及んだのだろうか?

 それも分からない。けれど、分からなくても構わない。

 今分かる事実は1つ。次元城の攻撃によって、王都ガダントから人が消えた。

 そうであるなら……あの次元城を此処から攻撃することを躊躇う理由は、1つとして存在しないということだ。


「オルフェ」

「ええ、いつでもいいわよ」


 キコリの斧が電撃を纏い始め、オルフェの頭上に光球が現れ天へと猛スピードで登っていく。そう、それは2人の得意技。キコリのドラゴンブレスのような無茶をする技を除けば、間違いなく最大威力を叩き出せる手慣れた遠距離攻撃。だからこそ、この一撃には外さないという絶対の信頼がある。


「ミョルニル」

「フェアリーケイン」


 下から電撃纏うキコリの斧が投擲され、上からオルフェのフェアリーケインの放つ極太の光線が降り注ぐ。ルヴの斧に注げるだけの魔力を注ぎ込んだキコリのミョルニルは結界を破壊するだけでは止まらず次元城の下部を大きく砕き、そのまま全体へと電撃を流し破壊していく。

 オルフェのフェアリーケインは修復された結界を破壊し直すとそのまま次元城の各部へと極太光線を降らせ穴だらけにしていく。

 そうしてキコリの手に斧が戻りフェアリーケインの光球が魔力を使い果たし消えた頃には、残骸としか言いようがない「次元城だったもの」が上空に浮いているだけになる。


「アレでもまだ浮く機能は残ってるんだな」

「そうね。でも、もうあれなら問題ないでしょ」

「なら、トドメだ。完全に破壊しよう」


 もう一撃。それ次元城は完全に破壊できるはずだ。とはいえ……アレが落下すれば王都ガダントは降り注ぐ瓦礫で破壊されるだろう。

 まあ、もう生物など残ってはいないがらんどうの都市ではあるが……。


「……ギガントブレイカーで綺麗に消すか。ちょっと行ってくる」

「え? ちょっと……何に遠慮してんのよ」

「俺等のせいで被害出たとか後々言われても嫌だしな」


 まあ、それはそうだろうとオルフェも理解できる。後から文句をつけようと思えばいくらでもつけられるのだ。その余地を消した方がいいのは間違いない。

 それに……あの状況からどうにか出来るわけがない。オルフェはそう考えながらキコリが飛んでいく先の次元城の残骸を見て。驚愕に、目を見開いた。

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