キコリの意思に反するもの

「いやあ、やはり陛下は凄いな!」

「ああ。モンスターどもを駆逐できるなら大分出来ることが広がる!」

「国王陛下にかんぱーい!」


 夜。王都ガダントのあちこちで、ドルヴァン七世を称える酒盛りが開かれている。

 誰もがモンスターの居ない未来を夢見ているのだろう。

 正直な話で言えば、キコリにもその気持ちは分からないでもない。

 人間に敵対的なモンスターというものは確実に存在するし、キコリもその脅威を感じたことは何度もあった。

 出会い頭に殺しに来るモンスターたち。それは人間の築いた防衛都市をも突き抜けようとすることもある。

 明確な脅威だ……もっとも、今のキコリにはモンスターの気持ちも分かるのだが。壁で囲い自分たちを殺そうとやってくる人間たち。逆に殺してやろうと思ったところで、あまり不思議ではない。

 不思議ではないが、そうではないモンスターもいることを知っている。明確な脅威に備え、手を取り合えるものならそうしたいと考えているモンスターだっているのだ。

 もっとも、それは中々伝わらないだろう……フレインの町にいた人間がモンスターの町であるフレインの町を安全な場所と認識しながらも信じ切れなかったのと同じだ。

 だから、言葉で示しても意味がないし行動で示しても根強い不信は消えない。

 そう……穏当な手段では意味がない。意味が無いなら、穏当ではない手段でやるしかない。

 レルヴァたちはキコリの意思に従い、次元城の中に転移していく。

 あの次元城が何処かに移動していれば転移は出来なかったが、怠慢にもその場に留まっているので転移は簡単だ。

 やるべきことは、次元城の無効化。とはいえ飛行能力まで無効化すれば大規模な被害が出る。それがキコリの望むところではないのは分かっている。

 だからこそレルヴァたちは次元城の隅々を巡りその機能を把握していく。


(魔力精製機能、確認)

(魔力循環機能、確認)

(水精製機能、確認)

(結界機能、確認)

(飛行機能、確認)

(空気循環機能、確認)

(攻撃機能確認。対空大魔力砲)

(攻撃機能確認。対空、対地魔力砲)

(攻撃機能確認。正面特殊魔力主砲。ゼルベクトの痕跡を確認。次元城の主武装と推測)

(攻撃機能確認。特殊魔法武装。ゼルベクトの痕跡を確認。大量殺戮用武装と推測)

(空間、次元移動機能、確認。ゼルベクトの痕跡を確認)

(特殊機能確認。固有振動の魔力を次元移動させている。ゼルベクトを『呼んで』いると推測)


 レルヴァたちは、結論する。これはキコリの意思に反するものだ。

 ゼルベクトの使徒としてこの世界に現れた者が、ゼルベクトをこの世界に呼び寄せるために造ったものなのだ。


(特殊機能の破壊、攻撃機能の破壊を優先。実行開始)


 させるわけにはいかない。全てのレルヴァたちは一斉に行動を開始した。

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