簒奪
同時刻。玉座に居たドルヴァン七世は次元城に侵入した「何か」に気付いていた。
「何かがいるな……昼間の連中ではない。いや、待て……次元城のデータベースに登録がある」
ドルヴァン七世の前に浮かぶ輝く映像には、何かの表示がされている……描かれている絵は、レルヴァだろうか。見ていたドルヴァン七世はしかし、なんとも難しそうな表情になる。
「レルヴァ……そう、恐らくレルヴァだ。偉大なるゼルベクトの遣い……ならば、何故此処に来た? まるで次元城を調べているかのような動き……この城に不備でもあると? そんなはずはない」
そう、ドルヴァン七世は破壊による進化を促すために動いている。つまり、ゼルベクトの望みに合致するはずだ。
だから、ゼルベクトの遣いであるレルヴァはドルヴァン七世を祝福こそしても、邪魔をする理由は無いはず。だが……爆発音と次元城を揺らす振動が、その考えを吹き飛ばす。
「な、なんだ!? 固有振動波の発振機能が消失!? くそっ、幾つかの武装も!?」
ドルヴァン七世の脳に直接送り込まれてくる被害状況と、響くアラート。それはレルヴァが次元城で破壊活動を行っていることを明確に示していた。
「いかん……! 城内の侵入者を排除だ! 対象、レルヴァ! 城内防衛機構、作動せよ!」
次元城を巡る魔力が攻撃魔法を発動させながらレルヴァを攻撃していく。命中、ダメージ確認。そんな報告を受けながら、ドルヴァン七世はレルヴァたちがその場から「消えた」ことを確認する。
「倒した……いや、逃げた……? 城内のサーチだ。何がいるか分からん」
ドルヴァン七世は、この城とほぼ完璧にリンクしている。だからこそ城に秘められた機能をほぼ全て使うことが可能だ。言ってみれば、この次元城がドルヴァン七世の能力を底上げしているのだ。
次元城が健在である限り、ドルヴァン七世は尽きぬ魔力を持っているのと同じこと。
だからこそ、この次元城を破壊させないように隅から隅までのサーチをしていく。
その結果分かったのは……この次元城にいる生命体は、2体。
「……2体?」
瞬間。ドルヴァン七世はその胸を剣で貫かれる。その剣に、見覚えがあった。確か、これは……粉々に破壊したはずの。そして、この剣の持ち主は。
「ようやく油断しやがったな。ったく、まさか死ぬとは思ってなかったぜ」
「き、貴様は……! 馬鹿な。殺したはず……いや、殺した! なのに、何故……!」
「チートってやつだ。話は聞いてたが、お前転生者の子孫なんだって?」
男の……アサトの剣が、光り始める。
「ま、お前じゃこの城は扱えねえよ。だから貰ってやる。安心して死んどけ」
「き、貴様! 何者……!」
ドルヴァン七世の身体が、輝きと共に弾け飛ぶ。それは……新しい主による、簒奪の瞬間であった。
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