介入すべきは
(とはいえ……放っておくわけにもいかない)
現実問題として、モンスターの殲滅は無理だ。いや、正確には「純粋なモンスターの殲滅」自体は実際に出来るかどうかをさておけば「可能」ではある。
しかし、今はデモンモンスターが存在する。たとえ普通のモンスターを殲滅したとして、暴走した大地の記憶がデモンモンスターを生み出すだけだ。
それだけではない。デモンモンスターとは通常のモンスターも敵対しており、討伐を行っている。
それがなくなるということは、結果的にデモンモンスターが無制限に溢れ出てくるということであり……戦いは、結局終わらない。
しかしそれを説いたところで納得するだろうか? 可能性は、かなり低いように思える。それも、あの王が相手では……。
「オルフェ、行こう」
「え? ほっといていいの?」
「ああ、少なくとも……今は」
宿の部屋に戻り、キコリは小さく溜息をつく。窓を閉めていても伝わってくる歓声は、ドルヴァン七世の演説に呼応するものなのだろう。まだしばらくは止みそうにもない。
「今すぐブチ殺しに行ったほうがいいんじゃない? 絶対ロクでもないことになるわよ」
「ああ。間違いなくそうなる」
「なら……」
「でも、今じゃない。アイツが王都に向けて放送しているところに殴り込んでも、別の問題を引き起こすだけだ」
それこそモンスターへの更なる敵対心か、あるいは普人への悪感情か。どうであるにせよ、いずれかの「最悪」へと転がっていくだろう。
キコリが今すぐ介入してそうなったというのでは、介入した意味自体がない。
そう、だから。介入すべきは「今」ではない。
「……何か考えてるの?」
「ああ」
キコリたちが直接手を出すのは最終手段だ。その上で、あの次元城は破壊しなければならない。
ただの古代人の遺産というのであれば放っておけばよかったが、破壊神ゼルベクト絡みであれば話は別だ。ほぼ確実に何かロクでもない機能がついている。最低でも、その機能を復旧出来ない程度に破壊する必要がある。だから、そういうことを出来る者に任せるしかない。
「……皆。俺が何を考えているか、分かるんだろう?」
「勿論です。我等が主」
代表するようにルヴがそう答える。レルヴァたちとキコリは、リンクすることで互いに思考を共有できている。といっても、必要なときに必要なものを共有する形ではあるのだが……要は今のように「伝えよう」と思ったときにそれが伝わる形になっている。
だから、一々詳細を命令する必要などない。出したい「結果」さえ分かれば、レルヴァたちはその目標に向けて遂行するからだ。
「やるのは夜だ。次元城を……無力化する」
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