最も熱かった時代へ戻ろう
「この声は……まさか、国王陛下!?」
「ドルヴァン七世様か!? しかし、何故!」
「あの禍々しいものは一体……!」
ザワつくドワーフたちは、ドルヴァン七世の計画を知らなかったことは明らかだ。
いや、それよりも。あの次元城とかいうモノはドワーフにも本能的に拒絶されている。
だというのに、ドルヴァン七世がその声を国民へと届けるのは何故なのか?
まさか自分の声であれば民が全員従うと……そういう風に考えているのだろうか?
『余は……ずっと歯痒かった』
ドルヴァン七世の演説は、そんな言葉から始まった。それは、苦渋の滲んだ……そんな声色だ。
『力が無かったからだ。余には現状を変える力が一切なかった。ただ豪奢なだけの古臭い城の中で、魂が腐っていくのを感じ続けていた。停滞した技術、傲慢なる怠惰、緩やかなる汚濁……』
ドルヴァン七世は我慢ならなかった。ドワーフという種族の、怠惰に。
自分たちの技術力に胡坐をかき、ずっと成長というものを見せない種族そのものに。
自分の先祖は先進的な技術を導入しようと腐心したというのに。
失敗したようだが『ジュウ』とかいう革新的な武器だというものにも挑戦していたのだ。
だというのに、この国のドワーフたちはダメだ。何も新しいものを生み出せない。
ならばもう、強制的に変えるしかない。ドワーフに新しい風を吹き込むのだ。
そう……伝説の時代。全ての種族が争っていたという時代に戻すのだ。
かの時代のドワーフたちは、次から次へと新しいものを生み出す熱意に満ちた一番良い時代であったという。その時代同様のドワーフに戻すことさえできれば、全てが変わるはずだ。
『もっとも熱かった時代へと戻ろう。全てのドワーフはかの時代の情熱を取り戻すべきなのだ。そう……余はこのドルヴァン七世の名の下に、まずは全てのモンスターの殲滅を宣言する』
それはドワーフにとっては……いや、全ての人間にとっては衝撃的な言葉であっただろう。
永遠に続くかと思われていたモンスターとの戦い。それを終わらせると宣言したのだ。
だとすれば、あの悍ましいものを感じる浮遊物にも我慢ができるというものだ。
いや、むしろドワーフたちにはなんだか素晴らしいものに見え始めていた。
『この次元城があればそれが出来る。出来るのだ。さあ、ドワーフの戦士たちよ立ち上がるがいい。希望の日々はすぐそこまで来ているのだ……!』
「……どうするのよ?」
「どうするったって……」
沸き上がる大歓声の中、キコリはオルフェに困ったような表情を向ける。
「今此処でアレをどうにかしてみろ。世界中の人間を敵に回しかねないぞ」
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