ドルヴァン七世
ゼルベクト。その言葉に、キコリとオルフェは警戒度を一気に引き上げる。
それは「たまたま知っている」で済まされる言葉ではない。
たとえゼルベクトの転生者だとしても、今まで同様の連中からその単語を聞いたことは無い。
なのに、目の前の男は……ドルヴァン七世はその単語を知っている。
知った上で「偉大なる」などと呼んだ。つまり……どういう形かは分からないが、ゼルベクトの信奉者……ということだ。
「其方たちは知らぬだろう。伝説の中に埋もれし偉大なる神ゼルベクトの名を。旧きを一掃し新しきをもたらす神の名だ……これは、その使徒たる我が父祖が造り出したものだ」
「転生者の、子孫……」
「然り」
確かに。「そういうもの」もいるだろうことは想像出来ていた。ゼルベクトに導かれた転生者も破滅する者ばかりではない。その中には世界に益ある結果をもたらした者もいる。あるいは何もしなかった者もいるかもしれない。そうして生き残った中に何処かの国の王族に転生した者がいて、その子孫が王になったとして。それは……不思議でも何でもない。
ないが、それを目の前にするとは思っていなかった。可能性として存在していたとしても、実際に出会うとなると話が違う。
そして何より……狙いが何なのかが分からない。こんな次元城とやらを目覚めさせて、何をしようというのか?
「其方たちも多少の事情は知っているようだ。その上で言おう。世界は……真なる神々の子供たちによって支配されなければならぬ」
「ふざけるなよ」
その結果の世界をキコリは知っている。自分勝手に争って世界の荒廃を加速させる、どん詰まりのような世界。そんなものを目指しているというのであれば……この場で殺す。
キコリは極めて自然に斧を振るい、切りかかろうとして。その身体が突然何かに包まれたのに気付く。
「理解できんか。まあ、仕方あるまい。だが、すぐに理解できる。これが最善であるのだとな」
その言葉を最後にキコリたちの身体は光に包まれ……気付けば、王都の街中まで転送されていた。
天に浮かぶ都市を見上げてザワついているドワーフたちは突然現れたキコリたちに気付きもしないが、キコリもそんなことを気にしている余裕は無かった。何故なら、今のは間違いなく転送。
すなわちグラウザード……いや、ゼルベクトやレルヴァのものとほぼ同じ力。
そんなレベルのものをアレは再現しているのだ。
「な、なんだあの城……!」
「何か悍ましい……黒鉄山脈にあんなものが埋まっていたというのか⁉」
『愛すべき、余の国民たちよ』
天空から響く声。それは……間違いなく次元城からの、そしてドルヴァン七世の声であった。
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