次元城

 ドワーフの国、アダン王国の国王……ドルヴァン七世。

 レルヴァが集めた情報で確認する限りでは、この古代都市を探していた張本人のはずだ。

 しかし、何故本人がこんなところにいるのか?

 少なくとも、古代都市が此処にあることを知らなければ来ているはずがない。

 そしてドワーフたちの話から判断すれば此処はただの落盤区画で、ドワーフの王が目をつけているはずがない。

 ならば何故? それが分からない。分からないが……少なくとも王本人であると名乗る者は此処に居る。だからキコリは、それを確かめようとする。


「……申し訳ありませんが、俺たちはアダン王国の国王陛下の顔を知らない。ご本人であると確認する術がない」

「何故確認する必要がある?」

「え?」

「王の言葉を疑うは不敬の極み。余の言葉こそが真実である」


 意味が分からない。キコリは王などというものに接するのは初めてだったが、全く理解が出来ない。

 同じ言語を話しているはずなのに、何を言っているか分からないのだ。それは決して、キコリが馬鹿だからという理由だけではないはずだ。


「何言ってんのこいつ? 馬鹿なの?」

「面白い妖精だ。種族が違うとはいえ王への敬意を持たぬとは」

「アタシは妖精の女王よ。人間如きが偉ぶってんじゃねーわよ」

「ははは! そうか、女王であったか!」


 膝を叩きながら笑っていたドルヴァン七世の「そろそろか」という言葉にキコリはハッとする。

 気付けばあれからそれなりの時間が経っている。恐らくはもう黒鉄山脈の上空に達しているはずだ。

 そう考えたそのとき、謁見の間の空中に何処かの風景がいくつか映し出されていく。

 それはどうやら外の風景、そして……この飛行する古代都市から見た地上の風景のようであった。


「不思議だとは思わぬか?」

「不思議……? いや、それは確かにこんなものがあるのは」

「そう。こんなものがある古代王国とやらはどうして滅びた?」

「……それは、色々あるでしょう。空を飛べたって滅ばない理由にはならない」


 伝説の時代の代物であれば、破壊神の手によって滅びたのかもしれない。あるいはやり過ぎてシャルシャーンに滅ぼされたのかもしれない。

 どうであるにせよ、滅びた理由など色々あるだろう。だが……ドルヴァン七世はどうやら違う考えを抱いているようだった。


「答えは簡単だ。古代王国などというものは……なかったのだよ。それは何かあったときに『その程度のもの』と思わせるための言い訳に過ぎん」

「まるで真実を知っているかのように仰いますね」

「知っているとも」


 ドルヴァン七世はあっさりと……本当にあっさりと、それを告げる。


「これこそは次元城。偉大なるゼルベクトの名の下に造られた兵器である」

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