キコリの記憶にあるアサト

 当然ながら、その疑問に答える者は居ない。この古代都市にこめられた願い。

 それがどんなものかなど、古代人にしか分からないからだ。

 今分かるのは……それが現代に「願いを叶える石」のようなものとして伝わっているということくらいだ。

 そしてキコリは今、1つの結論に達しようとしていた。


「オルフェ。街中の捜索は打ち切ろう」

「まさか……あの城に行くっていうの?」

「ああ。願いを叶える石の実在が怪しい状況に、アサトが気付かないはずがない。それでも、アサトは恐らく此処にいる。ということは……」


 願いを叶える石などというものは無いかもしれない。それでも、アサトがここを出ることなく何かをしている理由。そんなものは、1つしかない。


「この古代都市がどういうものか気付いたっていうこと?」

「あるいは調べてる最中かもしれない。だが、何らかの推測をたてていて……それがアサトの目的に合致するっていう可能性は高いと思う」


 勿論、それが何なのかは分からない。分からないが……アサトはそれで何かをしようとしている。

 分からないから、1度本人に聞いてみなければならないだろう。勿論、力尽くで聞きだすことも躊躇わない。

 そして何より……これ以上、アサトに時間を与えてはならない。


「オルフェ。飛ぼう」

「えっ、出来るの?」

「やるさ。このくらいの距離なら飛べる」

「そう、なら行くわよ」


 キコリとオルフェは翼を広げ、空中へと舞い上がる。

 目指す場所はただ1つ、あの中央の城のような建物だ。そのまま全力で飛び、キコリとオルフェは適当なバルコニーらしき場所へ舞い降りる。

 扉は閉まっているが、やはり鍵がかかっているわけでもないので簡単に開けられる。

 そうして中に入っていくと……どうやらそこは謁見の間のような巨大な空間で。

 他同様に明るく輝くその場所には……ボロボロになって倒れている1人の男の姿があった。


「アサト……!?」


 そう、そこに倒れていたのはキコリの記憶にあるアサトそのものだった。

 だが……駆け寄ったキコリが確かめたアサトは、すでに事切れていた。

 手に握っていた剣も砕け、どうやら「何か」と戦闘を繰り広げた結果こうなったのだろうと思われた。

 しかし、何と戦ってこうなったというのだろうか?


「魔法で殺されてるわね。相当強い魔法みたいだけど」

「まさかシャルシャーンじゃないよな? 此処が何か禁忌的なもので、それに触れたとか」

「アイツがやったら死体なんか残らないでしょ」

「……それもそうか」

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