願いが破壊神を生み出した
キコリの言葉通りに、2人は周辺の幾つかの家を巡る。
すると、おかしなことに。どの家も同じような家具を同じように固定していたのだ。
それが何を意味するのかはまだ分からないが……少なくとも住人がこだわり屋だとか、神経質とかではないのは確かだろう。
「此処も同じ、か。なんなのかしら」
「さあな……でも、そういう風に設計したのは確かだろうな」
キコリは机の下に潜って机の脚を確かめる。ガッチリと何らかの手段で固定されている……思い付きで出来るものではない。
この辺りの家はしっかりと家具を固定し、模様替えなど考えていないかのようだ。
その家具も画一的で、しかし明らかに何らかの設計思想を感じるものだ。
キコリにそれがどんなものか理解できないのが問題ではあるが……しかし、こういう構造には覚えがあった。
「なあ、オルフェ」
「何か分かったの?」
「いや。そうじゃなくて……此処、本当に都市なのか?」
「どういう意味?」
「あの悪魔の地下都市。覚えてるだろ?」
「勿論よ」
「アレと似た匂いを感じるな……って思うんだ」
言われて、オルフェはハッとする。確かに、あの悪魔の地下都市。アレもまた避難所としての機能を持たせた画一的な都市であり、それを前提にした機能やデザインであった。
それと比べると、確かにこの古代都市にも同じようなものを感じるのは確かだ。
(迂闊だわ……人間とモンスターだからって比較対象にすら入れてなかった)
そういう視点で見ると、確かにオルフェにもこの都市の正体がおぼろげに見えてくる。
ここは、この地下都市は……避難所であったのかもしれない。
もしそうだとすると、それは誰のための避難所なのか? ドワーフのためのものであるならば、それに相応しい設備もありそうなものだが……いや、そんなことは今はどうでもいい。
「だとすると願いを叶える石っていうのは、いったい何なの? そんなものが此処にあるっていう根拠は?」
此処が避難所のようなものであるならば、願いを叶える石なんてものがあるはずもない。
しかしドワーフたちはそう信じていたし、ドワーフの王もそれを前提に発掘作業をしている……はずだ。
「願い……願い、か。嫌な言葉だな」
キコリはそう呟く。願い。綺麗な言葉ではあるが、恐ろしい言葉でもある。
願い。それが破壊神ゼルベクトを生み出した。
願い。それが無数の世界を壊した。
願い。それがゼルベクトに導かれた転生者たちに血みどろの道を歩ませた。
「願いが破壊神を生み出した。なら、此処には……どんな願いがこめられてるっていうんだ?」
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