古代都市

 そう、それは間違いなく古代王国だった。中央の巨大な城と、その周囲の建物の数々。

 この太陽など届かないはずの地下空間でギラギラと輝きを放つそれらは、まるで昼間のようにこの空間を照らしている。


「魔法の明かり……だよな? あんなの魔力消費がとんでもないだろうに、何処から補給してるんだ?」

「んー……」


 オルフェは古代都市を眺めながら「あー」と声をあげる。ちょっと見れば、すぐ分かる構造だ。

 もっとも、それは妖精の感覚であって一般人にとっては……ましてやキコリにとっては違うのだが。


「これ、巨大な魔力製造施設だわ」

「え?」

「古代人って変なもの考えるのね。魔力を使うと同時に製造していく。自分だけで全部完結するようにしてるんだわ。魔力なんてそこら中に溢れてるのに、そういうのを信用できなかったのかしら」

「それは……俺には分からないけどな」

「まだ変なところはあるけど。まあ、そこは今はいいかしら。アサトを探すんでしょ?」

「そうだな」


 キコリは落下すると同時にレルヴァの翼を広げ、そのまま静かに古代都市へとオルフェと共に降りていく。


「随分飛ぶのに慣れたわね」

「短時間限定だけどな。長時間飛ぼうとすると制御が甘くなって投げ槍みたいになる」

「アンタ、そっち方面も才能ないの……?」

「……そうみたいだな」


 翼を消しながらキコリが言えば、オルフェは大きく溜息をつく。

 なんというか、本当に可哀想になってくるが、こればかりは仕方がない。

 レルヴァに任せるにしてもキコリからレルヴァに意思伝達をする必要がある時点で戦闘にはあまり使えない。そんなことをするくらいなら、大人しく投げ槍になったほうがマシだろう。


「ま、いいわ。それより此処……」

「なんか凄いな。道までギラギラしてる」


 そう、道にはしっかりと石が敷き詰められ、それらもキラキラと光を放っている。

 まるでこの場所に光に照らされない場所は存在しないとでもいうかのようだが、実際そうなのかもしれない。

 ……もっとも、此処が巨大な魔力製造施設だというのであればこの地面の石もまた、その一部なのかもしれない。

 そんな古代都市を歩きながら、キコリはふと1つの可能性に思いつく。


「この古代都市が魔力製造施設だっていうならさ」

「ん?」

「つまり、その魔力を制御もしてる……ってことだよな」

「そうね?」

「なら、都市の維持に使ってる莫大な魔力を『願いを叶える』方向にも使える……ってことじゃないか?」


 もしそうだとすれば「願いを叶える石」の正体も見えてくる。キコリはそう思うのだ。

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