オルフェがいたら

 坑道の中は、ドワーフが設置したのだと思わしき魔法の明かりが途中まで灯っていた。

 だが、ある地点から先は暗く、坑道の掘り方が違うものになっていた。

 それまでのツルハシで掘り進め補強を重ねたものとは違い、綺麗にくりぬいたかのようなものになっていたのだ。

 その違いの理由が何か……については語るまでもない。恐らくはアサトだろう。

 坑道……いや、地面を掘る魔法。そんなところだろうか? 随分と便利な魔法を持っているが、そのせいで坑道に魔法の残滓が濃く残っている。

 ちなみに、キコリにはそんなものは分からない。分からないが、オルフェとレルヴァたちには分かる。そしてレルヴァが分かるということは、繋がっているキコリにも分かるのだ。

 いわば外付けのセンサーのようなものであるが、立派にキコリの一部である以上はキコリの能力といえる。


「魔力の残滓が分かるって、こういう感覚なんだな」

「アンタ、そっち方面はいつまでたってもダメよねえ」

「魔法の才能がないってのは言われてるからな。諦めてる」


 まあ、それについてはオルフェもそう思っている。

 魔法に必要な才能は魔力だと勘違いされがちだが、本当に必要なのは構成力や制御力などだ。

 どれだけ魔力が大きくても、豆粒のような魔力しか持たない者に魔法勝負で負ける者が出るのは、その辺りが理由であったりする。

 そしてキコリの場合、魔法の才能はゼロだ。いつも使っているミョルニルはともかく、グングニルあたりになると才能の無さが透けて見えてくる。たぶんキコリとアイアースで魔法勝負をすれば、アイアースが簡単に勝利するだろうくらいにはキコリには才能がない。

 しかし、そんなキコリに「レルヴァ」という魔法の扱いに長けたモノがくっついたことにより弱点が疑似的にではあるが減ることになった。それ自体は良いことなのだが……破壊神の眷属であり分身でもあるレルヴァがキコリに融合したことは、あまりオルフェは歓迎していない。

 そんなことになるくらいだったら……と思いはするものの、今更だ。


「ま、アタシがいるから平気よ」

「そうだな」


 キコリはそう言って、オルフェに微笑みかける。


「オルフェがいたら……って思うことは何度もあったよ。特に異世界に行ってたときはさ」

「まあ、異世界の話は……あたしもどの程度役に立てたか自信はないけどね」


 ドラゴンであるグラウザードによる異世界への強制転移。オルフェが魔王の能力に抵抗したうえで異世界に一緒に行ったとして……はたして役に立てただろうか?

 それは分からない。分からないが……その場にいたかったな、とは思うのだ。


「ちょっと待って」

「ん?」

「何かある。あたしがいいって言うまで動くんじゃないわよ」

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