異世界は難しいけどな
宿の一室。戻ってきたレルヴァたちがキコリの中に戻り、キコリはレルヴァの手に入れた情報を自分の中で整理していた。
恐らくはアサトがいると思われる場所。しかし、そうであるとも限らない。
「どう思う? オルフェ」
「分かんないわよ。アサトがいるかもしれないし、古代王国のほうかもしれない。でも、可能性が高いのは……」
「アサトが古代王国のマジックアイテムを取りに行った……って可能性だな」
「そういうことね」
邪魔されないために崩落を起こしたと考えれば、レルヴァが感じた魔法の残滓についても説明がつく。あとは、まだアサトがそこに居るかどうかだ。
もし願いを叶えるとかいう話が本当であったとして、アサトの願いは前に聞いたものが本当であれば「元の世界に帰ること」のはずだ。
そうであれば、アサトが古代王国を見つけていればもう、元の世界に帰っていてもおかしくはない。
……まあ、もしそうだったのであればキコリとしては心配事が1つ減るので問題はない。
ドワーフ的には大問題だろうが、そこはキコリの知ったことではない。
むしろモンスターを消してくれとか願われても問題なので、アサトが元の世界に帰るのに使ってくれた方が良いとすら考えている。
「となれば、決まりだな」
「行くの?」
「ああ。アサトにはさっさと元の世界に……」
言いかけて、キコリは止まる。アサトが願いの叶う宝石で元の世界に帰る。それはいい。構わない。望むところだ。
しかし、しかしだ。それを信用できるのだろうか?
願いの叶う宝石でアサトが元の世界に帰りたいと願う。アサトが必ずそう願うという根拠は?
キコリは、アサトをそこまで無条件に信じられるのか? 答えは否だ。
ではどうする? 願いを叶える宝石自体にはキコリは全く興味ない。
アサトが使って元の世界に帰るのは一向に構わない。つまり……。
「元の世界に、帰ってもらう。俺が、願いの叶う宝石とやらを使って」
「あー……そうなるのね」
「問題ありそうか?」
「たぶんアンタがアサトを信用してないように、アサトもアンタを信用してないだろうなって思うくらいね」
「だろうな」
当然だろうとキコリも思う。普通に考えて「お前の願いを叶えてやるから石を寄越せ」などと言われて渡す奴がいるはずがない。いたとしたら相当なお人好しだ。
だからたぶん、いや。きっと戦いになる。そして、それはもう仕方ないとキコリは考えていた。
「じゃあ、早速行くか」
「え? 行くって……方法はあるの?」
「忘れたのか? 話したじゃないか」
キコリはそう言うと、黒い穴のようなものをその場に開く。
「異世界は難しいけどな。俺とレルヴァの行ったことのある場所には……こうやって転移できるんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます