私と貴方の間の話題といえば

「凄いな。分かるのか?」

「ええ。というよりも……私と貴方の間の話題といえばソレしかないかなと」


 言われて、キコリは「それはそうだ」と頬を掻く。確かにほとんど交流がない相手に頼みがあるなどと言えば、その僅かな交流でした話題のどれかに決まっている。


「では、アサトに関してどのようなお話をご所望で?」

「一番最初に聞きたいのは、今何処にいるのか。何を探して、どんなことをしているのか。それ以外も聞けるなら聞きたい」

「なるほど……では、そうですね。まずアサトですが、この王都ガダントに来たことは確かです」

 黒髪の剣士、アサト。その存在が初めて確認されたのはセノン王国のジェキニの町だった。

 冒険者登録をしたのもジェキニの町であることは分かっているが、そこで討伐依頼を中心に大きな成果をあげ、その後各地へ移動。その際に「チキュウ」「トウキョウ」など幾つかの言葉に関する情報を調べていたことも分かっている。


「神殿で異界言語の書物に関して熱心に見ていたとの情報もあります。『面白いから眺めているだけだ』とは言っていたそうですが……」

「恐らく、読めていた……と」

「想像になりますがね」


 そこから先の坑道はセノン王国の王都、そこから各地を経由して防衛都市ニールゲンに移動。

 しばらく冒険者として活動した後、アダン王国に移動。1か月ほど前に王都ガダントに現れ冒険者としての活動を開始。

 そして……ここまでの活動の中で、アサトと揉めた者は大概が行方不明になっている……という噂がある。


「……と、こんなところですね。そこから先の足取りはまだ掴めていませんが」

「そ、そうか。ちなみにアサトの目的については?」

「分かりません」


 キコリのその質問に、パナシアはあっさりと答える。


「何かを探しているのは確実ですが、どのような目的で探しているのかが未確定で、お渡しできる精度の情報にはなっていないんです」

「何か……か」

「ドラゴンについての情報を探していたという話もありますが、ドラゴンについて知りたがる冒険者は少なくありませんしね」


 確か、アサトはシャルシャーンを探していたはずだ。元の世界に帰るために探している……と言っていたはずだが。しかしパナシアはそこまで掴んでいるわけではないようだ。


「と、私の得ている情報はこんなところですが。そちらは何故アサトに会おうと?」

「話してみたいことがあるんだ。幸いにも面識もあるしな」


 アサトはキコリを異世界出身だと疑っていたフシがあった。それはもしかすると協力者か同郷を探していたのかもしれないが……とにかく会って確かめなければならない。邪悪な者であるのか、否かを……だ。

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