ウルフライダー
翌日。ダンとゼンはキコリに首都に向かう話を聞くと、顔を見合わせて「そうか」と頷いた。
なんだか納得した表情であり、少しばかり申し訳なさそうな表情でもあった。
馬車まで送ると言われて辿り着いた中央広場ではすでにダンとゼンが周囲を睨んで黙らせていたが、そのせいもあってか余計なことを言う者はいなかった。
「その方がいいかもしれんな」
「探しているやつが見つかるといいな」
「ああ、ありがとう。2人には感謝してる」
「ついて行ってやれればいいんだがな」
「こっちでの仕事を投げ出すわけにもいかんし」
「いや、いいんだ」
居れば頼れそうではあるが、そこまで迷惑をかけるわけにもいかない。
「……ちなみに王都の雰囲気って」
「此処よりは大分マシだ」
「言っちゃなんだが吹き溜まりだからな」
やっぱりそうなんだな、とはキコリは言わない。
普通では生きられないような人間が最後の望みを抱いて防衛都市にやってくる。
キコリ自身、そこでなら生きられるかもしれないと思い防衛都市ニールゲンへと向かった。
防衛都市というものが人間のキコリを生かしてくれたのは事実なのだ。
あの頃の自分が吹き溜まりに相応しい人間だったことは分かっているからこそ、それを否定する気はない。
だから、キコリはこう答える。
「それでも、懐は深いさ。ここが俺に合わなかっただけでさ」
「それは懐が深いとは言わんな」
「だが言いたいことは分かる」
そう言って笑いあうキコリたちだったが……そこに馬車の御者が「あのー……」とダンたちに声をかけてくる。
「そろそろ馬車の出発時刻なので……」
「お、そうか」
「ではお別れだな、キコリ」
「ああ。ダンもゼンも元気で」
手を振り馬車に乗れば、御者が扉を閉めて馬車が動き出す。
王都行きの乗合馬車だが、乗客は当然のようにドワーフばかり。
やはり普人が嫌われているのか、1人も目が合わないが……キコリの頭の上のオルフェが「フン」と吐き捨てる。
気に入らない。そんな態度が思いっきり出ているが、やはり目は合わない。
当然、誰も会話をしない……そんな時間が続き、夕方に差し掛かった頃。
「うわっ!?」
そんな御者の声が上がる。同時に聞こえてくるのは、ゴブリンの「ギャギャギャ」という声だ。
「な、なんだ!?」
「見ろ、ウルフライダーだ!」
そう、それはウルフに乗ったゴブリン……ウルフライダーたちの姿だった。
以前キコリが戦ったホブゴブリンのリザードライダーと比べると大分ショボいが……それでもかなりの機動性だ。
「おい、アンタら! 迎撃頼む! こういうときのための安値なんだ!」
斧を構えた御者に言われて全員が馬車の外に出ていく。当然、キコリとオルフェもだ。
「……まあ、ひとまず馬は守らないとな」
「そうね」
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