アサトの行方に関して
「……で、行くの?」
「ちょっと考えてる」
「なんで?」
聞き返してくるオルフェは、本当に分からない……というか、人間について理解する気が一切ないのだろう。それゆえに分からないのだとキコリは思う。しかし、これはそこまで難しい話でもない。
「まず前提として、ドワーフは普人が嫌いだ」
「そうね」
「アサトは見た限りだと普人だ」
「あー、ドワーフの国をウロチョロするのは難しいってわけね」
「そうだ。情報収集をするにしても、この国でマトモに出来るとは思えない」
以前吟遊詩人から聞いた話だと、アサトにはかなり荒っぽいところがあるように思える。
ドワーフの国のような普人に好意的でない場所に長居出来る性格ではないような気がするのだ。
それは恐らく、他の国でも同じだと思うのだが……しかし、そうとも言い切れない部分がある。
そういう意味では、アサトの行方に関しては限定される気もする、のだが。
「……けど、ダンたちのこともあるし。さっきの衛兵のこともあるし。獣人よりは話が通じる気もするんだよな……そうだとすると、今俺が言った前提条件もひっくり返る」
そう、そこが問題なのだ。イルヘイルでは衛兵含めて全員敵対的で、防衛伯のような一部のトップしか話の出来る人間が居なかった。
しかし、此処ではそこまでいかなくとも話が出来たのだ。この差はかなり大きい。
「正直、俺は大きな街なんて防衛都市くらいしか知らないけど世界が大きいことは知ってる。アサトが探してるものを考えると……」
「じゃあ行きましょ。王都っていうやつ」
「……無駄足かもしれないぞ?」
「そしたら人間の国行けばいいじゃない。そこに居たことはハッキリしてるんだし」
そう、少なくとも人間の国である「セノン王国」にアサトがいたことは分かっている。
そうして旅する中で防衛都市ニールゲンに辿り着いたようだが、アサトがまだセノン王国にいるかどうかは分からない。
あるいは獣人の国である「獣王国サーベイン」の方に行っているかもしれないが……このドワーフの国「アダン王国」にいる可能性だってある。
その辺りを探らなければならないし、他に移動するにしても王都に移動した方がいいのは間違いない。
ならば、キコリの心は決まった。行くべきは、アダン王国の王都だ。
「よし。なら王都に行こう。そこで情報を集めるんだ」
「そうね。じゃ、さっさと宿戻りましょ」
「ああ」
そうして先導するように飛ぶオルフェの後を追いながらキコリは思う。
(本当に助かるな。オルフェのおかげで、俺は間違えずに済む)
まあ、これをオルフェに言えば「何馬鹿なこと言ってんのよ」と怒られるのは間違いないので、言わないのだが。
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