結構破損率が高いほう
「それに、妙な気配があるとしても斧を武器にしているのは悪くない」
「うむ。冒険者の武器がどういうものかを分かっとる」
「だが待て。そうであるとも限らんぞ」
「そうだな。確認する必要がある」
ダンたちは頷きあうと、キコリに視線を向ける。
「聞かせてくれ。何故斧を武器にしとる?」
「使い慣れてるから……かな。他の武器は高尚過ぎてよく分からないし」
キコリの答えにダンは頷くと、隣の男とヒソヒソ囁き合う。
「使い慣れてるからだと」
「悪い答えではないな」
「うむ。使えもせん武器を見せびらかしてる馬鹿どもよりは余程良い」
やがて結論が出たのか、ダンと呼ばれた男がズイッと前に出る。
「儂はダン。『鉄叩き』のダンだ」
「そして儂はゼン。『波打ち』のゼンだ」
「俺は……キコリ。『死王』のキコリだ」
馬鹿正直に名乗るキコリにオルフェは「あー……」という顔をするが、ダンとゼンはむしろ「ほう」と声をあげる。
「中々に勇ましい称号だ」
「名前はキコリか。偽名にしろ、斧に全てを賭けたかのような名だ」
「気に入った」
「ああ、気に入った」
ダンとゼンは頷きあい、キコリにウインクをする。
「よおし、キコリ。お前は普人にしては中々に見込みがある。どうだ? 一緒に飯でも食わんか?」
「いい考えだ。酒もたっぷり飲もうじゃないか」
「ありがとう。でも俺余所者なんだけど……ドワーフの国に入れるかな?」
キコリが聞けば、ダンとゼンは大きな声をあげて笑い出す。
「真面目だな!」
「真面目だ! だがいいぞ!」
「ああ、そういうのは好きだ!」
「よしよし、身分証は何か持っているか?」
言われて、キコリはこの旅の為に久々に持ち出してきたものを示す。そう、銀級冒険者の証だ。フレインの町で暮らし始めてからは必要がなく埃を被っていたものだが、人間の町で活動するのであれば必要なものだ。
ダンとゼンもキコリの差し出したペンダントを見て、頷きあう。
「銀級か。中々に頑張っているな」
「ああ。とはいえ、必要なとき以外は出さん方がいいかもな」
「ああ。人が集まれば馬鹿も増えるからな」
その言葉の意味は、キコリにも理解できる。イルヘイルでのような騒ぎになる。
つまりは、そういうことなのだろうと理解できたからだ。
「……分かった。気を付けるよ」
「ああ。だがまあ、基本的には大丈夫だと思うがな」
「その鎧と斧。お前によく馴染んでいるソレを見れば、武具を大切にする奴だと分かるからな」
そう笑う2人に……キコリは言えなかった。
むしろ武器はポンポン投擲するし、武器も鎧も結構破損率が高いほうだとは。
絶対に言えないな、と。そう察して余計なことを言わないようにしようと自分を律していた。
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