もっと説明のつかない力

「此処に……嵌めるのか?」


 しかし、それでどうなるというのか。まさか此処からこの金属ドングリが飛びだすというわけでも……と、そこまで考えて。オルフェがキコリの金属ドングリを持つ手を掴む。


「待って、何これ」

「何って……此処に嵌めるんじゃないかと思うんだが」

「いいから、そのまま持ってて」


 オルフェはピシャリとそう言い放つと、キコリの持っている金属ドングリを色々な方向から眺め始める。

 至極真面目なその表情を見れば、これが普通ではない何かであることはキコリにも想像がつく。

 問題は、どんな代物であるかなのだが……やがてオルフェは、盛大に舌打ちをする。


「これ作った奴は底抜けのアホね。自殺願望でもあるんじゃないかしら」

「え? 何なんだ? 俺には何も分からないぞ」


 キコリの認識は変わらず「金属ドングリ」のままだが、オルフェには何が見えているのか?

 疑問符を浮かべるキコリに、オルフェはキコリの手から金属ドングリを取り上げる。


「これはね、こっちの尖ってない部分に魔力を圧縮して入れることを想定してるみたいね。中に小さいけど魔石の気配がするわ。たぶんだけど、一定以上の衝撃で爆発するようになってるんじゃない?」

「え? なんだそれ。つまりこれを投げ込んで爆破するとか、そういうことか?」

「違うわね。この筒を見るに……この先っぽの尖ってる部分を飛ばそうとしてたんじゃない?」


 そう、それは異世界で「銃」と呼ばれるものに酷似していた。勿論今のキコリにも分からないし、当然オルフェにも分かるはずはない。

 だが、それでもオルフェは今ある情報でその目的を看破してみせた。

 それでも、オルフェの表情は謎を看破した者のソレではなく馬鹿のやらかした跡を見る者のソレだ。


「そんなもん、上手くいくはずもないでしょうに。使えばこんな筒弾け飛んで大怪我するわよ」

「そうなのか? 結構頑丈そうなのに……怖いな」

「魔力ってのは狭い場所に閉じ込められることを嫌う性質があるのよ。それなのにこんな小さなものに閉じ込めて爆発させようとしたら、完全に制御を離れるわ。そんなことも分からない奴が作ってたのね、コレ」


 そう、魔力とは異世界の科学でいう元素のようなものではない。もっと説明のつかない力の奔流の一部であり、何処かに留まるというのは魔石のような例を除けば存在しない。だから魔石を使った道具類も、その力を流れるように設計するのであって、決して閉じ込めるように設計してはいない。

 つまり、これは……それが分からない者が作ったということ。そして、そうであるならば。


「これ作った奴、死んだんじゃない? それで誰もいなくなったって可能性は高いと思うけど」

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