刀身のない剣のような

 薄暗く、埃臭い。それでいて、どことなく冷たい雰囲気の漂う室内。

 人によっては恐ろしげ、とでも評しそうなそんな室内にキコリたちは足を踏み入れる。


「窓もあるみたいだけど……暗いな」

「そうね。というか……人の出入りが長年なさそうな割には空気の流れがあるわ。それと、魔力の流れも……何らかのマジックアイテムみたいね」

「え? まさか換気のためだけのマジックアイテムってことか?」

「そういうことでしょうね。でも、それだけじゃ足りないってとこね。掃除もしてないなら当然かしら」

 

 舞う埃を見ながらオルフェはそうキコリに答える。実際、換気だけでどうにかなるものではない。

 人が住んでいない建物というものは、まるで役目を終えたとでもいうかのように劣化していく。

 此処には、そんな人の居ない建物特有のものがあったのだ。


「まあ、この様子なら何かいるってわけでもないでしょ」

「そうだな」


 此処に何かが潜んでいるというのであれば面倒な話になったが……どうもそういうわけでもない。

 ならば、此処が何なのかを確かめるだけでいい……簡単な話だ。

 薄暗い廊下を進み手近な扉を開けると、そこは倉庫のようであり、朽ちた木箱が何個も置かれていた。

 蓋の空いているものもあり、中には鉄か何かと思われる金属のインゴットらしきものが詰められている。

 何のために使うのかは分からない。しかし、こういうものが必要な何かであることは確かなようだ。


「……金属を大量に使うような場所、か。武器工房とかじゃないだろうな」

「さあ? 探索してみれば分かるでしょ」


 武器工房であれば当然炉があるはずだが、それらしきものは近くに見当たらない。

 建物の中を歩いて適当にドアを開けていけばベッドらしきものや食堂らしきものもあったが、あまり多人数で利用することを想定していないような造りであることが分かる。

 となると、少人数で此処で何かをやっていたということになる、のだが。

 その答えは、工房らしき場所を見つけたことでようやく明らかになる。


「工房、だな」

「そうね。この筒、何かしら」


 そう、魔法で加工でもしていたのか、最低限の設備と……積まれた試作品らしき物の数々。

 どのどれもが、刀身のない剣のような形をしていた。しかしながら、鍔の部分は何やら筒のような形をしており、可動式であったりレンコンの切り口のように穴が開いた何かがついたものもあった。

 刀身がないのではなく、そういう形状のもののようだが……金属製のドングリのようなものも落ちている。

 それはどうにも……金属のレンコンの穴に、しっかりと嵌りそうな大きさと形であった。

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