転生者絡みだよな

 そうしてヴォルカニオンの領域を抜けた先にあったのは、何やらおかしな場所だった。

 やけに頑丈そうな灰色の建物と、同じような材質で作られた壁。

 壊れかかった金属の門はギイと風に揺れて寂しげな音を立てている。

 そう、疑いようもなく廃墟だ。廃墟だが……見たことのない形式だ。

 記憶の消える前のキコリであれば「コンクリートだ」と言ったかもしれないが、今のキコリには分かるはずもない。

 分かるはずもない、が……何か異質なものであることだけは理解できた。

 やけに広く敷地をとったその建物は、錆びたトゲトゲの鉄線のようなもので壁の上を覆っていたらしく、恐らくは侵入者防止の仕組みのようなものであったのだろうことがうかがえる。

 しかし……いったい何の建物なのか? 

 こんな場所にあるということは、随分昔の人間の建物であるか、あるいは「それ以降」に出来て放棄されたものであるはずだが、まあモンスターが作ったものである可能性も……ある。

 だがどうであるにせよ、これを作ったのは恐らく転生者であることは確かだろう。


「……転生者絡みだよな」

「たぶんね。見たことない作り方だもの。何か違う知識を持ってる奴が作ったってことで間違いないわ」


 そう、技術には全て系統樹というものがある。始まりがあって、そこから進歩し派生していく。

 だからこそ大抵のものは見れば源流となる技術が見えてくる。

 しかし、目の前の建物にはそれがない。まるでこういう建物を作る技術だけを何処かから持ってきたような、そんな歪さがあるのだ。

 だからこそ、キコリたちはこの建物を警戒していた。

 見たところ放置されてから随分たつ建物であるように見える。見えるが……それとて絶対というわけではない。

 何かおかしな仕掛けがあっても何の不思議もない。だからキコリはルヴの斧を構えながら近寄っていき……壊れかかった門へと一撃喰らわせる。

 情けない音をたてて壊れた門はそのまま砕けて転がり、何の反応もない。


「……よし、行ってみよう」


 キコリの合図で2人は門の残骸を踏み越えて奥へと進んでいく。壁にはところどころヒビのようなものが入り、補修された跡もない。

 人が居るならば放っておくはずもないから、やはり誰もいないのかもしれないが……それでも油断せずに2人は周囲を見回しながら歩く。奥にあった頑丈そうな扉に手をかける。


「扉、か……開くか?」

「さあね。鍵くらいかかってるかもだけど」


 鍵のかかっていない扉は、いとも簡単に開いて……埃臭い匂いにオルフェが「うえっ」と声をあげる。明かりもなく、昼だというのに薄暗い室内が、そこには広がっていた。

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