随分と長い間

 フレインの町のある領域を抜けて、更に2つほどの領域を超えた先。そこにあったのは……荒野だった。

 何もない荒野……いや、違う。

 此処には巨大な火山がある。もうもうと煙を噴き上げる火山は、しかし。この中にあっては、ちっとも目立ってはいなかった。

 逃げるゴブリンの群れ。もうそれしか考えられないとばかりに無様に逃げるゴブリンを追うのは、炎。

 ジュオッ、と。それらを無慈悲に焼き尽くし溶かし尽くしたのは、追いついた炎。

 大地全てを焼くかのようなソレが通り過ぎた跡には、そこにあった全てが溶けた惨状しか残ってはいない。そして、それをやったのは。


「……ヴォルカニオン?」

「んん? 誰かと思えばキコリか。久しぶりだな。立派なドラゴン……いや、何か別のものも混ざっているな。だが、元気そうだ」


 そう、それはあらゆるドラゴンの中でもっとも「ドラゴンらしい」姿を持つドラゴン。

 いるだけで周囲が燃え上がりそうな、強い魔力を纏った身体。

 太い手足と、雄大なる翼。

 何もかもを砕きそうな牙。

 そう、それは。それこそが。

 爆炎のヴォルカニオン。キコリが最初に出会ったドラゴンであり、キコリの中で色褪せない鮮烈な印象を持つドラゴンであった。


「ああ、久しぶりだ。なんだか、随分と長い間会っていなかった気がするよ」

「ククッ」


 嬉しそうに言うキコリに、ヴォルカニオンは面白そうに笑う。


「ほんの瞬きほどの間に過ぎんが……濃い日々を過ごしてきたと見える」

「そうかもしれないな。本当に、色々あった。けれどまさか、ヴォルカニオンがこんな近くに来ていたなんて」

「近く? この場所が移動したのは知っていたが……」

「モンスターの町がある。俺は今、そこに住んでいるんだ」

「ほう」


 あまり興味がなさそうな声をあげるヴォルカニオンだが、ヴォルカニオンがどういうドラゴンかを知る者からしてみれば、それは充分すぎるほどに興味をひかれている反応だった。

 ヴォルカニオンにとっての価値観が「燃やすか」、そして「燃やさないか」の2択であることは明確だからだ。


「フレインの町っていってな。モンスター同士で力を合わせて過ごしてるんだ。信じられるか? ゴブリンも共通語喋って働いてるんだ」

「なるほど、驚きだな。今我が燃やしたゴミよりも多少頭が良いようだ」

「……ちなみに燃やさないって選択肢は」

「ないな。前にも言ったが、此処に踏み込む者は貴様のような例外を除けば焼き尽くす。それは変わらぬ」

「そっか。ヴォルカニオンらしいな」

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