この町の目的
キコリが旅に出るという話は、速やかにミレイヌにも伝えられた。
まあ、当然だ。特別顧問とかいう形だけの役職であるにせよ、役職持ちなのだから不在にする以上は町長であるミレイヌに了解を取る必要がある。
だからこそキコリはミレイヌに会いに来て……凄くアッサリと、会うに至った。
まあ、これもまた当然だ。キコリという防衛力を当て込んだら、当の本人が旅に出るというのだ。
キコリがドラゴンでなければ攻撃魔法の1つもかましている。まあ、実際には勝手に当て込んでいるのだからそう文句も言えないが。
「……事情は理解した。まあ、そのアサトとかいう男を放っておくのは確かに不安だ」
「ああ。だからまずは人間の町を目指す……何か指針になる情報はないか?」
「ない。というか、それ以外で話し合う部分があると思わないか?」
「何がだ?」
「この町についてだよ。一応聞いておくが、人間相手にこの町のことを知らせるつもりか?」
「いや、そんなつもりはない」
まあ、此処に来た人間が何処かの人間の町に戻れば結局伝わるのかもしれないが……だとしても、積極的に人間側に触れ回るメリットがあまりないのも事実だ。
だからキコリとしては別に何かを話すつもりもないのだが……ミレイヌが懸念しているのは、別のことであるようだった。
「私としては、別に伝わってもいいと思っている」
「そうなのか? それは意外だな」
「……この町の目的を思い出してみろ。いつか破壊神ゼルベクトに対抗しようというのに、モンスターと人間でいがみ合っていられるか?」
「それはそうだけどな」
キコリもそれに関しては同意だが「デモン」が現れてからもうそれなりにたつ。
モンスターとほぼ同じでモンスターより狂暴なデモン。
とはいえぶっちゃけた話で言えば、キコリも人間側であれば区別がつかない自信はある。
ゴブリンは襲ってきたしコボルトは敵対心が凄かったし、オークともワイバーンとも殺し合った。
というか妖精にも殺されかかった。そんなモンスターとデモンは違いますといったところで、何処の人間が納得するというのか?
基本的に話し合いにならないから人間とモンスターはいがみ合ってきたのだ。
今更「仲よくしよう」と手を差し出したところで、罠と考える者は多いだろう。
何よりデモンの存在がそれに拍車をかける。アレは違うんですといったところで信用などされないだろう。
「……難しいだろ」
「そんなことは分かっている。だがやらないよりはマシかもしれない」
「まあ、な」
「だから親書を託そう。適切だと思うタイミングで使え」
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