全部借りもの
それは、あまりにも明確な殺害宣言。
他の何とも誤解しようのない、とてもシンプル過ぎる「お前を殺す」という意志の表明。
だからこそ、トールは感情のままにキコリに手のひらを向けて攻撃魔法を放つ。
「ブラストボンバアアアアア!」
キコリを襲った爆発魔法がキコリが居た場所に大爆発を起こし、トールとジェネラルスケルトンはその余波で城の中まで吹っ飛びながら……それでもトールは高笑いをする。
確実に殺した。それだけの自信のある魔法だった。
「ハ、ハハハハッ! ふざけやがって! 俺が……俺が最強なんだ!」
「流石は魔王様です! あれだけの威力ならば仕留めたでしょう!」
「確かに凄い魔法だ。まあ、当たらなきゃ意味ないけどな」
「ハ、ハア⁉」
「な⁉」
何処かから聞こえてきた声にトールとジェネラルスケルトンは周囲を見回し……城の屋根から降りてきたキコリに驚愕で目を見開く。
避けた。けれど、いつの間に? そんな疑問がトールの頭の中を埋め尽くす。
「き、効かなかったってのかよ……!」
「いや、お前が叫んだときにに上に避けた。こっちに手のひら向けてたから、何か撃つんだろうなと思ったし」
「て、てめえ……!」
飛べるのだから、そんなものは簡単だ。しかもただ指定の地点で爆発するだけの魔法だ。
これがドラゴンブレスのようなものであればキコリを追うように軌道を調整すればいいだけだから、そんな簡単に避けることなどできなかっただろう。
つまるところ、トールの魔法の選択ミスでしかない。あんなものは、あんな近距離で撃つべきではなかったのだ。
「魔王様に近づくな!」
「じゃあ、まずはそいつだな」
キコリの言葉と共に、キコリの鎧からレルヴァの姿が現れる。
レルヴァは現れると同時にジェネラルスケルトンへと襲い掛かり、キコリへ襲い掛かろうとしていたジェネラルスケルトンは剣を構えたままレルヴァに体内……骨の中へと入り込まれてしまう。
「くっ、カカカカカ……退避、退避!」
「な、はあ!?」
ジェネラルスケルトンがあっという間に乗っ取られていてトールは声をあげるが、そんなトールを無視してジェネラルスケルトンは階段を降りて何処かへ行ってしまう。
「お、お前……なんなんだ。まさか、お前も転生者なのか⁉ そんなチート、ズルすぎるだろ!」
「は?」
「強ぇ力で無双して相手を倒して満足かよ! 俺だってお前みたいな……お、前?」
言いかけて、トールは驚愕したようにキコリを見る。
「魔力が全然無ぇ……? なんだお前、そんな凄ぇ魔力を纏ってるくせに、全部借りものなのか……? なんだそれ。どういうことだよ……?」
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