お前を殺しに来た
「ギイイイイイ……」
「ギイイギギギギギ!」
耳障りな音を立てながら、レルヴァたちは急降下していく。
それはさながら真っ黒な滝の如く。飛行して迎撃しようとしたワイバーンたちが、真っ先にその攻撃対象になる。
「ゲエッ⁉」
「ギエエエエエエ!」
自分の身体に何かが入り込んでくる感触。ゴーストや悪魔が得意とするそういった技は、レルヴァも得意とするところだ。
魔力生命体故の、その身体の隅々まで入り込み主導権を奪う手法。これが「攻撃」であれば更に非道な……人格を破壊するまでいくが、今回は「そういうの」ではない。
あっという間にワイバーンの身体を乗っ取ると、そのまま戦場を遠く離れていく。
可能な限り殺さない。ワイバーンの身体であればそれが簡単であるからこそ、ワイバーンを乗っ取ったレルヴァたちはそのまま可能な限り遠くへ行くのだ。
「な、なんだ!?」
「憑依されたんだ! 連中、ゴーストどもと同じだ!」
「魔法を使え!」
そうして地上からゴブリンシャーマンやコボルトシャーマンたちが放った魔法を、レルヴァたちはいとも簡単に避けていく。当然だ。対空攻撃というものは、狙って簡単に当たるものでもない。
そうしてレルヴァの群れは地上へと急降下し、その場にいたモンスターたちを乗っ取っていく。
その状況は、まさに圧倒的の一言だ。魔王軍のメンバーたちが、次々と乗っ取られて戦場を離脱していく。
ゴブリンも、コボルトも、オークも、ミノタウロスもハーピーも、スケルトンも。
誰もが乗っ取られ、ぞろぞろと町の外へ向かっていくのだ。
「おい待て! くそっ、その身体から叩きグゲッ、た、たたた……たいひ。まちのそと」
「なんなんだ! こんな、こんな……! トーぐぼっ。退避」
まさに物量作戦。レルヴァの数の暴力で片っ端から魔王軍のメンバーを乗っ取り町の外へ退避させていく。あまりにも凶悪で、あまりにも圧倒的で。そして……あまりにも優しい攻撃だ。
敵対者を殺さず、あくまで魔王トールのみをターゲットに定める。
こんな優しい攻撃も中々にないが……受けている側がどう思うかは、また別の話だ。
実際、魔王城のベランダでトールは戦慄していた。
自分の従属下の配下たちが、あんな方法で奪われていく。
奪い返そうにも、あの黒いモンスターの群れには従属が効いた様子もない。
「ど、どうすりゃいいんだ……いや、こうなったら俺が直接……!」
「いや、お前は此処で終わる」
「は⁉ な、なんだお前!」
そこに飛んでいたのは、そこかしこにいる黒いモンスターと同じの……いや、それに似た鎧を着た何者か。そのバイザーをあげて出てきた顔に、トールは「あっ」と声をあげる!
「お前! 戻ってきてやがったのか……!」
「そうだ。そして、お前を殺しに来た。それで、この騒動は全て終わりだ」
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