君がこの件をどう解決するのか
言って出てくるなら苦労はしない。「不在のシャルシャーン」の「不在」にはきっと呼んでも来ないというのも含まれている。
そう苦々しく思うアイアースだったが……その姿がアッサリとキコリの前に現れるのを見て愕然としてしまう。
「やあ、お帰りキコリ。心配したよ」
「ああ。なんとか帰ってきた」
「人間離れの次はドラゴン離れか。まあ、それ含めてドラゴンは自由ではあるけどね。アハハ」
そこのクラゲ野郎も相当だしね、と笑っているシャルシャーンに、アイアースが早々にキレて殴り掛かる。
「おいコラこの根性曲がりが! あっさり出てきやがってどういう了見だテメエ!」
「なんだい? ボクが来ない方がよかったとでも?」
「そういう言い方する根性が気に食わねえんだよ!」
アイアースの拳の連打をアッサリ受け止めながら、シャルシャーンは軽く笑う。
「それにしてもレルヴァを連れてきた上に融合するとはね。まあ、それは元々そういうものだけれども」
「……知ってんのか」
思わずアイアースの拳がピタリと止まる。シャルシャーンが世界のほぼ全てを知覚しているのは知っているが、異世界までは流石に範囲外のはず。となると、シャルシャーンはこの世界でレルヴァを見たということになるが……。
「知っているさ。かつてこの世界に来襲した破壊神を葬ったのはボクだ。天空を埋め尽くさんとするレルヴァの、その全てを薙ぎ払った」
「……お前が弱体化した原因の話か」
「そうだね。だからキコリ、気を付けるといい。あの馬鹿のせいではあるんだが、君は望まれない方向性と可能性をその身に宿した。そちらへ進むことは、あまりお勧めしない」
言った瞬間、アイアースはシャルシャーンの胸倉を真顔のまま掴む。いつものキレ方ではない、本気の……心の奥底からのキレ方に、シャルシャーンは少し意外そうな顔をする。
「他人のために怒るのか、君が」
「うるせえんだよ、さっきから俯瞰でモノ言いやがって。テメエがあの魔王とかいうのをさっさと始末しときゃ『方向性』とやらは生まれなかったんだよ。それをゴタゴタと。キコリがテメエに寝言をほざけと頼んだか?」
「ありがとう、アイアース。でもそこまででいい」
アイアースはキコリにそう言われ、舌打ちと共に手を離す。そんなアイアースと入れ替わるように、キコリはアイアースの前に立つ。
「シャルシャーン。俺もアイアースと同じ意見だ。アンタはなんでも知ってるくせに、中々動かない。でも、それはいい。性格が悪いのは初対面の時から分かってたから」
「言うねぇ……」
「今知りたいのは魔王軍の本拠地だ、シャルシャーン。これ以上致命的なことになる前に、魔王を仕留めたい」
キコリがそう言えば、シャルシャーンは軽く肩をすくめる。仕方ない、とでも言いたげな様子にアイアースが再びキレそうになるのを、キコリが押し留める。
「いいとも、教えよう。君がこの件をどう解決するのか……ボクも少しばかり興味があるからね」
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