魔王軍の本拠地

「逃げた……か。とすると、魔王軍とかの本拠地まで追わないといけないのか?」

「まあ、そうなるかもしれねえが……確かに探すのは手間だな」


 魔王軍。あの「魔王」を見る限り、何処かに生活拠点があるのは確実だ。何かのモンスターが変化した姿であったと仮定しても、人間のような姿でいるのであれば洋服や装備などのメンテが必要だからだ。

 キコリのように……まあ、今のキコリの装備はレルヴァの変化したものだが、自分の魔力を変化させて武器とするような種族であるとも思えない。

 しかし、そうなるとフレインの町同様にそれなりに発展している可能性もある。

 おまけに配下は全員「従属」した者たちだ。可能であれば、あまり傷つけたくは無いが……そんなことをいっている余裕はないかもしれない。

 ではどうするか? 考えて……キコリはふとルヴに思い付きで聞いてみる。


「なあ、ルヴ」

「何か?」

「……生命体を一時的に乗っ取ることは出来るか? 勿論、後遺症はない前提でだ」

「おいキコリ、お前まさか」


 アイアースの言葉にキコリが頷くと、アイアースは難しそうな表情で「まあ、それしかねえか……」と呟く。

 事実、それが出来るならば……殴って気絶させるよりはずっとマシな結果になる可能性がある。

 だからこそアイアースとしてもそれは許容範囲内になるのだが……キコリのその質問に、ルヴは含み笑いを始める。


「フ、フフフ……ヒヒ、ヒヒハハハハ。はい。大得意ですとも! 我等レルヴァ、その手のことは得意中の得意です。その魔王軍とやらが相手ですね? ええ、存分にやってみせましょう。それに……」

「それに?」

「この世界に来てから、より強く主との繋がりを感じます。私たちレルヴァ、どうにも貴方様の中に深く繋がった様子……恐らくは主が望めば、新しい同胞すらも……」


 なるほど、異世界での出来事を見る限り「破壊神ゼルベクト」にはそれが出来たのだろう。

 そしてドラゴンであるキコリが元の世界に帰ってきたことで無制限の魔力の仕様が可能となり、レルヴァとの繋がりも強化されたのだろう。

 その結果として「そういう能力」が生まれたとしても不思議ではない。そして、そうだとすれば……大分、やりようはある。

 

(とすると、残る問題は魔王軍の本拠地……)


 けれど、それすらも解決方法はある。問題は、その解決方法を持つ者が協力してくれるかどうか、なのだが。キコリはそれも勝算はあると考えていた。そう、このドラゴンエッグを作った者。キコリたちに味方してくれた者。

 そして、世界の何処にでもいて何処にもいないもの。それは。


「シャルシャーン、出てきてくれ。魔王軍の場所が知りたいんだ」

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