どうしようもないまでの「力の差」
何故。トールに浮かんだのは、そんな疑問だった。
まず、自分の「従属」があのシャルシャーンとかいう少女に効いていない。
グラウザードの反応からドラゴンであることは分かる。
けれど、グラウザードに効いてシャルシャーンに効かない理由は何なのか?
いや、そういえば……思い返せばグラウザードが殺したあの2人も効いていなかった。
何故? 分からない。分からない、けれど。
「グラウザード! 同じドラゴンだろ、俺もサポートする! やっちまえ!」
「トール! お前はアイツを知らないからそんなことが言えるんだ! アイツは、シャルシャーンは! 規格外の……原初のドラゴンなんだ! アイツの『不在』の本当の理由は! アイツがその力を世界の守護に割いているからであって……!」
「へえ。随分と『色々』見てきたようだ」
グラウザードの鼻先に移動したシャルシャーンの蹴りがグラウザードを吹っ飛ばし、その上でトールが「うおおおおおお!?」と声を上げる。
だが、グラウザードはもはやそれどころではない。
見てきたのだ。グラウザードは世界を移動するその力で「並行世界」と呼ばれる無数の可能性の世界をも見てきた。
過去の世界……伝説の時代をも見てきた。それこそ、破壊神と呼ばれる存在をもだ。
そして、そして……その全ての世界で。
(コイツは……シャルシャーンは! その全ての世界で破壊神を滅ぼしてきた……! どの世界においても、ただの1度も負けることはなかった! 俺たち『新しいドラゴン』は! その戦いで傷つき弱体化したシャルシャーンの代わりでしかない! それでも……!)
「お前はそれでも最強だ。弱体化した今でも……! たぶん正面きってやり合えるのはヴォルカニオンくらいしか……!」
「そうだね。ヴォルカニオンは強い。クセの強いドラゴンたちの中でも唯一の正統派だ。純粋に強くて、思慮深く慈悲がない。もうちょっと穏やかになってくれたら、ボクも人生ってやつをエンジョイできそうなんだけどな」
グラウザードの放った無数の光線を、シャルシャーンは真正面から受けてビクともしない。そんあもの意味がないとでも言いたげな、そんな涼しげな表情だ。
「そういう意味では君にも少しは期待してたんだぜ? それがどうだ。世界移動の際の隙を突かれて『そんなもん』に引っかかって。それであの2人を異世界に送り込むとはね。まったく、どうしようもないな」
やれやれ、と。そんな投げやりな様子で指からシャルシャーンの放った光線がグラウザードを貫く。
それは……同じドラゴンであるグラウザードの鱗を貫く、どうしようもないまでの「力の差」だった。
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