そんな話
そして、結果から言うと三人目も同じだった。
三つ目の都市「法都ポワデリン」。そこにいた男はキコリの影から毒々しいデザインのナイフを構えて浮かび出てきて……キコリの鎧の背から放たれた無数の火球に吹っ飛ばされていた。
「ぐあああああ!?」
「今度は暗殺者か」
「中々パターンがあるな。ちょっと面白くなってきたぜ」
転がっていった男は黒ずくめの衣装を纏っていて、如何にも暗殺者といった風情だが……やはり若い。そして強い魔力を感じる。
キコリが人間だった頃の……今もあまり成長していないが、ともかくその頃の豆粒みたいな魔力を思えば、実にうらやましい話ではある。
そして黒ずくめの男は意外にも元気で、その服も焦げ1つない。恐らくは何かのマジックアイテムなのだろう。
凄まじい身体能力で起き上がると、そのナイフを構えなおす。
「くそっ! なんだ今の魔法! それに俺の影渡りをどうやって看破したんだ!?」
「そんなこと言われてもな……」
そもそも見破ったのはキコリではなくレルヴァだし、魔法を使ったのもレルヴァだ。キコリは何もしていない。何をしたとか言われても困るのだ。
「お前のくだらねえ技なんか通じねえってことだよ」
「えっ」
「何が影渡りだ。要はただの不意打ちだろうが」
アイアースがここぞとばかりに煽りにいっているが、3人目ということもあっていい加減イラついていたのだろう。まあ、キコリとしても「よくここまで落ち着いてたよなあ」という部分はある。
「だいたい、なんだテメエ。こんな真昼間にそんな黒い服着やがって。ナメてんのか」
「こ、これは優秀なマジックアイテムなんだ!」
「うるせえバーカ。武器頼りが2人続いたかと思ったら、また似たようなのが出てきやがって。そもそもペラペラ喋りやがって暗殺者にすらなれてねえじゃねえか、半端者のカスが」
「ひ、ひでえ! なんでそこまで言われなきゃいけないんだ!」
「カスだからだろカス。自覚しろカス」
アイアースに煽り尽くされた男はしばらくブルブルと震えていたが、すぐにその表情を怒りに満ちたものに変えてアイアースへと襲い掛かってくる。
そんな男へとアイアースは槍を突き出し……しかし槍が刺さるその寸前、男の姿がフッと地面に潜るように消え去る。
一瞬後、その姿はアイアースの背後に現れて。
「ぐああああああ!」
キコリの鎧から放たれた火球の群れに再び吹っ飛ばされる。
無様に転がっていった男は再び立ち上がって「卑怯者があ!」と叫びながら地面の……その影へと潜って。
「トライデント」
水を纏うアイアースの槍が、キコリの肩越しに背後に現れた男を貫き砕く。
今度は悪態すらつけず死んだ男につまらなそうな視線を向けるアイアースの手に、槍が戻ってくる。それを肩に担ぐと、アイアースは大きな……とても大きなため息をついた。
「避けるだけマシだけどよ……結局ワンパターンなんだよテメエ。他の連中とほぼ変わらねえぞ」
背後に出てくると分かっていれば、いくらでも対処できる。
もっと使い方があっただろう魔法も、使い手次第では何の意味もないという……まあ、そんな話であった。
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