意外と簡単に帰れるんじゃないか

 そして、そこから更に数日。キコリたちは巨大な都市の廃墟へと到着していた。

 中央に見える崩れた巨大な城と、都市を囲む防壁。明らかな大都市の廃墟。

 恐らくは此処が帝都ハルコネンなのだと、そうキコリたちに思わせた。

 かつては衛兵が立っていたのだろう巨大な門も今は無惨に崩れ落ち、侵入者を防ぐ効果はありそうにない。

 

「……此処がハルコネン、か?」

「恐らくはそうでしょう」

「曖昧だな?」

「実物を見たことはございませんので」


 まあ、それはそうだろうとキコリも納得してしまう。しまうが……ならばどうするかというと、これが中々に難しい問題であったりする。

 とりあえずは此処がハルコネンであるという前提で探索をするが、不正解であればまたハルコネンを探さなければならない。

 その際は地図を探さなければ永遠に探索することになりかねないが……幸いにもルヴがこの世界の文字を読めるようなので、今後もあてもなく彷徨うようなことにはならないだろう。


「言葉は通じるのに文字は相変わらず読めないんだよな……」

「まあ、読めなくても全く問題なかったけどな」


 そう、廃墟しかないのだから文字が読めようと読めまいとそんなに変わらない。ルヴがいる今はより一層必要が無くなっているが……何故「言葉だけが通じるのか」が気にならないわけではない。

 そんな空気を感じ取ったからだろうか、ルヴが「世界の共通点ではないでしょうか」と口にする。


「伺った話ですと、ドラゴンなる生き物が発動させた能力で此方まで移動されたとか」

「まあな」

「しかし苦し紛れのように発動させただけのものに、そこまで細かい調整が効いているとは思えません。となると……『近似世界』といったところではないでしょうか?」


 近似世界。つまり似ているところや共通点のある世界ということだが、特に調整もせずに飛ばしたことで比較的そういったものが近い世界に移動したのではないか、とルヴは説明する。


「もしかすると隣り合う世界かもしれませんが。ふふ、面白いですね」

「訳が分からん。それっぽい単語で誤魔化してるんじゃねえだろうなお前」

「頭の悪さの原因を余所に求めるのが良い傾向とは思いませんが」

「言うじゃねえかテメエ……」

「アイアース。ルヴと喧嘩するなよ。ルヴもアイアースをからかうんじゃない」


 とはいえ、キコリも理解できているわけではないし、むしろアイアースより理解度が低い可能性はあるのだが。


「まあ、世界移動さえ出来れば意外と簡単に帰れるんじゃないかってのは分かった」

「それで正解です。正解ですが……」


 言いながら、ルヴは「匂いますね」と呟く。


「人間の匂いがします……はてさて、こんな所に何をしに来たのやら」

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