ゴミ
「……なんだったんだ、今の馬鹿はよ」
「ゼルベクト絡みの転生者、だろうな」
地面に落下した炭に視線を向けることもしないアイアースは、嫌そうな顔を隠しもしない。
アイアースからしてみればいきなり襲い掛かってきた馬鹿が舐め切った戦い方をして死んだだけなのだから、本気で意味が分からないのだろう。
「あー、そういうことか。能力頼りっつーか武器頼りっつーか。たぶんあの剣振れば死ぬような連中を相手にしてたんだろうけどよ」
「空飛べてたし、結構魔力もあったんだろうな」
「かもな。まあ、どうでもいいけどよ」
どのみち死んだのだ。この馬鹿な男が何者であったとしてもアイアースにはどうでもいい。いい、のだが。少しばかり気になることはあった。
時間差で突き刺さった青い剣にアイアースは近づき、槍で軽く突いてから触れてみる。そうしてみれば、この青い剣がどんなものなのか明確に理解できていた。
「ふーん。剣っつーか魔法の杖だなこりゃ。魔力をチャージするだけで魔法が出るようになってやがる」
「へえ、便利だな」
「雑魚相手にはな。たとえばこいつでヴォルカニオンとやり合うとするだろ?」
「ああ」
「1秒でそいつは剣ごと燃え溶けてるな。まあ、元の世界で俺様が使えば多少はマシだろうが、そんんときゃ剣が耐えきれねえだろうよ」
「……つまり?」
「ゴミだ」
剣をポイッと投げ捨てると、アイアースはあの町の武器屋から持ってきた槍を担ぎ直す。
「余計なことしてねえ分、この槍の方がまだマシだな」
「そんなにか?」
「ああ、鋳型にはめて作ったみてえな剣だ。俺様は好きじゃねえな」
まあ、魔法の杖寄りだというのであればそんなこともあるのかもしれないとキコリは思う。
どちらにせよキコリも剣は使わないし、ルヴたちがいればあんな剣はそもそも必要ない。
だからこそ何の未練もなくキコリは消えてしまった焚火のほうへ視線を向ける。
また焚火を作るにしても、場所を変えたほうがいいだろう。少し……というか、かなりケチがついてしまった。
その手間を考えてキコリは大きく溜息をつくと、アイアースに振り向く。
「アイアース。どこか別の場所で野営をやり直そう」
「だな。まあ、何処も似たようなもんだがよ」
「確かにな」
この廃墟の町の何処で野営をしたところで、たいして変わりはしない。しかしまあ、気分の問題というのは大事なもので。
「あ、あっちの方にするか。ちょっと広いぞ」
「広場かな……まあ、そっちでいいか」
そんなことを言い合いながらキコリたちは夜を過ごし、再度歩き出す。その頃には、昨晩の襲撃者のことなどは……2人ともどうでもよすぎて、その顔をぼんやりとしか思い出せなくなっていたのだった。
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