敵対宣言

 強大な魔力を放つそれは、明らかにマジックアイテム。

 何の能力があるかまでは分からないが、この距離で出すということは明らかに遠距離系の能力を持っている。

 だからキコリは、即座に光の槍をその手に生み出し投擲する。


「グングニル!」

「なあっ!?」


 問答無用で投擲されたグングニルは空中で大爆発を起こし、しかし反撃のように放たれた火炎放射をキコリたちは飛び退いて回避する。


「不意打ちだと……ふざけやがって!」

「あのセリフの後にそんなもん出しといて言えた口か」

「俺はいいんだよ!」


 ハッキリ言ってあの台詞だけでも相当な敵対宣言だというのに、そこに強力なマジックアイテムの剣……火を吹くようなものを出してきたのだ。攻撃の意思の確認には充分すぎるほどだ。


「つーか……グングニルだと? お前、その魔法……まさか転生者か?」


 なるほど、こいつは転生者なのかと。キコリはそう思う。それもたぶん、ゼルベクト絡みの転生者だ。先程の分類にピタリと当てはまる。とはいえ、そうなるとこの世界の人間の状況も少しばかり同情する面も出てきてしまう。


「悪いが、これは俺が作ったわけじゃなくてね。それよりお前……なんで俺たちを襲いに来た」

「はあ? 俺たちの縄張りに侵入者がいたって聞いてわざわざ追いかけてきたんだよ。ったく、手間かけさせやがって」

「……あの2人だな」

「そうなるな」


 キコリとアイアースが助けたあの2人から聞いたのだろう。助けた結果こんなのが来るとは、なんとも助け甲斐のない話ではある。しかし、それにしたところで疑問はある。


「それでわざわざ追いかけてきたのか? 何の意味があるんだ?」

「見せしめだよ。縄張りに勝手に入った余所者は死ぬ。簡単だろ?」

「ああ、意味が全然分からない」

「そうかい。まあ、そのまま死ねよ」


 男が剣を振れば再び炎が吐き出され、回避したキコリたちを追うように今度は氷の槍が雨のように地面に刺さっていく。どうやら先程の赤い剣を何処かに仕舞い青い剣を振っているようだが、他にも持っていてもおかしくはない。


「主よ。私たちが対応しても?」

「ああ、頼む!」


 キコリがルヴに答えれば、キコリの兜や鎧の背面から無数の火球が吐き出されていく。

 それは青い剣の吐き出す氷の槍を相殺し、それでも残った火球たちが男に着弾していく。

 だが、それでは死なないだろうという予想通りに男の笑い声が煙の中から聞こえてくる。


「ハ、ハハハ! すげえ鎧だな! 気に入ったぜ、それは俺が」

「ミョルニル」

「あ?」


 キコリの構えたルヴの斧が電撃を纏い、思いきり振り被ったキコリが投擲する。

 爆音をたてながら飛ぶルヴの斧はボケッと浮かんでいた男を真っ二つにして、その残骸を電撃で黒焦げの炭へと変えていた。 

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