それはないと思っていたもの
そう、言われてみれば確かに「世界を壊す者」には特徴がある。
パッと見ただけでは分からず、しかし彼等の行動やその理由を見て初めて分かる、そんな特徴。
「身勝手さが世界を壊す、か」
「真理ですね」
「かもしれないな。けれど、そういう意味ではこの世界の人間も似たようなものかもしれないけどな」
あの時会った人間は、キコリたちを町に連れて行けば自分たちが吊るされると言っていた。
滅びかけの世界で未だ同じ人間同士で争う、それもまた身勝手さなのかもしれない。
それを考えると、あのソイルゴーレムたちのような新しい生き物が生まれるのもまた必然である気もする。
この世界の人間はもう、詰んでいるのだから。ソイルゴーレムたちの暮らす世界の1つの生き物として文明の主役からは零れ落ちていくのかもしれない。
「放っておけば俺たちの世界もそうなる……か」
「お嫌ですか」
そのルヴの問いかけに、キコリは少しだけ考える。
これまで会ってきた人々。人間、妖精、モンスター……色々いたが、基本的にキコリは優しい人々に支えられてきた。
その中で、人間そのものへの関心が削れていくようなこともあった。けれど、それでも。
「そうだな。俺は、人間を見捨てられない。こういう風になるのは、ちょっと許せそうにない」
だから、戻らなければならない。戦わなければならない。あの魔王とかいうクズを倒し、まずはモンスターを救わなければならない。
もしかすると魔王によってモンスターと人間の衝突は洗脳のような形でもなくなるかもしれない。
しかし、そうはならないという確信がキコリにはある。それは、あのアサトと名乗っていた男だ。
アレもゼルベクト絡みであるのは間違いない気がする。となれば……魔王の魅了は効かない可能性は充分にある。
そうなれば魔王とアサトの戦いになるが、それでどれだけの被害が出るか分かったものではない。
その中にオルフェやアリアやドドたちが巻き込まれれば……と思えば、そうなる前にどうにかしなければならないのは確かだ。
「だから、早く戻らなきゃいけないんだけどな」
「何処へ戻るってんだ? 縄張り荒らしが」
聞こえてきた声にキコリは立ち上がり、アイアースも素早く跳び起きて槍を掴む。
声はするが姿は周囲にはない……いや、上にいる。翼も無いのに浮いているのは何かの魔法だろう。青年と言える年齢に見えるその男からは、強い魔力が感じられる。
しかし……それほどの実力者がいるというのか。それはないと思っていたものが、キコリたちの前に現れて。
その青年は、虚空から真っ赤な剣を取り出していた。
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