新しい、この世界の

 そう、確かにアイアースの言う通りにそれで説明はつく。しかし……そうであるならば、何故この世界で人類は滅びかけているのか? 何故、レルヴァたちは変わらず存在しているのか?

 守護者が弱いから? いや、違う。違う気がする。レルヴァを敵と認識している割には、あの町に攻め込んでいない。それは何故なのか? それに、あまりにも。


「弱すぎる。守護者じゃない気がする。もっと、何か……」


 そう、たとえば。たとえばの話だ。この滅びかけた世界が再び再生の方向に向かっていくとして。そこに生まれる生物は、人間なのだろうか?

 もっと何か、別のものが生まれる可能性はないのだろうか? それが、このソイルゴーレムたちであるとしたら。


「新しい、この世界の生き物なんじゃないか?」

「ああ? コレがかあ?」

「ヤメテ」


 巨大ソイルゴーレムの頭をコンコンと叩くアイアースだが、そうしているうちに「可能性としてはあるかもしれない」と思い始めてしまう。

 何しろ、この世界の神はすでにほぼ滅びているのだ。つまり神の創りし秩序は消えかかり、新しいルールも定まっていない状態だ。そこに「新しいモノ」が生まれたところで、何の不思議もない。

 しかし、そうであるということは。新しい神もまた何処かに生まれかけているのかもしれないが……まあ、そこはアイアースが気にしてやるべきことでもない。

 だから、アイアースが言うべきはこうだ。


「ま、どうでもいいな。こいつらの正体なんぞ分かったところで何の足しにもならねえ」

「まあ、それはそうだな」

「だろ?」


 キコリはアイアースに頷くと、再び「交渉」を再開する。こいつらが何者であれ、キコリたちを襲う理由は消えていない。そして大前提として、レルヴァたちを殺させるわけにはいかないのだ。今後襲われても困るし、そこの問題を解決しなければならない。


「俺たちは無駄に戦いたくないんだ。襲わないでほしいし、仲間にもそれを伝えてほしい。出来るか?」

「デ、デキル」

「よし、交渉成立だ。もう行っていいぞ」


 キコリがそう言えばソイルゴーレムたちは地面に戻っていき、自然とキコリとアイアースも地面へと戻る。これで襲ってこなくなるかは分からないが、まあ多少の意味はあるだろう。なければないので、今度はぶっ飛ばすだけではある。そう考えて、キコリは歩き出そうとして。


「考えがあってのことかもしれませんが。先程の土塊に乗っていけば楽だったのでは?」

「単純に信用できねえってだけだろ。なあ?」


 ルヴとアイアースにそう言われて、キコリはピタリと動きを止める。言われてみればそうだったかもしれない。そこまで考えが回らなかった。とはいえ、それを言うのは流石にどうかと思った、のだが。


「……思いつかなかった」

「おう、そうかい。正直でいいと思うぜ」


 アイアースのそんなフォローが、少しばかリ辛かった。

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