オルフェと2人で旅をしてた頃
それから、更に数日。キコリたちは、小さな町の廃墟に辿り着いていた。
目的地である帝都ハルコネンではないが、此処も滅びた町であるようだった。
ボロボロになって崩れた廃墟には誰も住んでいる様子は無く、焼け跡も残っている様子は、当時の惨状を思わせた。
「此処もレルヴァがやったのか?」
「そうかもしれませんし、そうではないかもしれませんね」
からかうようなことを言うルヴに、キコリは小さく溜息をつく。ルヴはどうにも飄々とした性格であるらしいが、そんなレヴと今後付き合っていくうえで、キコリはどうしてもそれを言わねばならないと思ったのだ。
「ルヴ。お前に言わなきゃならないことがある」
「なんでしょう? 私の物言いがお気に召しませんでしたら黙りますが」
「そうじゃない。話はもっと単純なんだよ」
「と、申しますと?」
「俺は頭が良くないんだ。レヴみたいなお洒落な言い回しだと俺には本気で通じない……もっと分かりやすく言ってほしい」
本気で困った様子のキコリの言葉にルヴは黙り込み、アイアースが吹きだしてしまう。これを皮肉ではなく本気で言えるのがキコリという人物であることをアイアースは知っていて、ルヴは知らなかった。その辺りが2人の反応の差だと言えるが……ルヴは頭が悪くないがゆえに、その辺りを正確に理解できていた。
だからしばらくの無言の後、ルヴはようやく声をあげる。
「つまり分からないということです」
「そうか。でも、この世界を滅ぼしかけたのは破壊神とレルヴァなんだろ?」
「確かにその通りですが、司令塔たる当時の破壊神は滅びておりますので」
「ああ、なるほどな」
末端である自分には分からない。つまりはそういうことなのだろうとキコリは理解する。そればかりは仕方のないことだ。何はともあれ、考えるだけ無駄……ということだ。
「それより日が暮れます。今日は此処で休んでは?」
「そうだな。まともな建物は……」
「ねえな」
アイアースの言う通り、泊まれそうな建物はない。どれもボロボロで、寝ている間に崩れてきてもおかしくはない。余程ひどい壊され方をしたのだろうが、これでは一夜の宿にすることも出来そうにはない。
「まあ、今日も野宿ってわけだな」
「そんなもんだろ」
キコリとアイアースは慣れた手つきで燃えそうなものを集め、ルヴの斧を近づければ魔法で簡単に火を点けて焚火にしてしまう。この数日ですっかり定型化した役割分担であった。
食べ物は買えるはずもないので、レルヴァたちのいた城内に生えていた木の実を集め、それを齧っている。
「あの城の庭に木の実があってよかったな」
「はー、情けねえ。ドラゴンが魔力が足りずに木の実なんぞ食う羽目になるたあな」
「俺は結構楽しいぞ。オルフェと2人で旅をしてた頃は、こんな感じだったしな」
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