大地の記憶
言葉が通じて、人質という概念がある。ならば同じ手が効くとキコリは考えた。
相手にそういう手を使うということは、それが有効であると少なからず考えているのだから。
勿論、人間相手にそういう手が効くから使っている、というだけの可能性もあるが……やってみてダメなら完全に倒す方向に持っていけばいい。
そんな次善の策とか戦略性とか、そういうのが一切ないことを考えながらキコリは斧を突きつけるが……ソイルゴーレムたちは、迷ったように動きを止めていた。
「キ、キサマ」
「ただの脅しじゃないぞ。お前みたいなのは何度も相手したことがあるんだ」
そう、巨大なだけのソイルゴーレムなど、ソイルレギオンと比べればどうということもない。
今のキコリならレルヴァたちから魔力を借りればギガントブレイカーくらいであれば放てるのだ。
つまり、一撃で確実に仕留める自信はある。あとはソイルゴーレムたちがどう出るか、というだけの話だ。
「さあ、どうする。答えろ。死ぬか、降参するかだ」
「リ、リカイ。ハイボク、コウサン」
「よし」
キコリは斧を突きつけるのをやめ、担ぐ。降参するというのであれば、これ以上戦う理由はない。まあ、同時に疑問も生まれてきてしまったのだが……それは、この巨大ソイルゴーレムに聞けばいいだろう。
「じゃあ質問だ。どうして俺たちを襲った?」
「レ、レルヴァ。テキ。ホシノ、テキ」
「星?」
キコリは思わず空を見上げるが、別に星は出ていない。一体どういう意味なのか。考えるキコリにルヴが囁く。
「星とは大地のことです、主。そういう概念があります」
「そうなのか。引っかかるものもある気はするけど、よく分からないな」
「あまり一般的な概念ではありませんがね。そういう思考に到るのは、大地の記憶に接続できる者くらいと思っておりましたが」
「大地の記憶……」
その言葉なら、キコリも知っている。元の世界では大地の記憶からデモンが生まれたのだから。それと関わりがあるということは、この世界のソイルゴーレムもデモンのようなものなのだろうかとキコリは思う。
しかし、デモンにしては話が通じる。となると、全く別のものということになるが……なら何かと聞かればキコリには分からない。
「守護者じゃねえのか」
ソイルゴーレムがもう敵対しないと分かって登ってきたアイアースが、そんな声をあげる。しかし、キコリはそんな単語には……いや、覚えがある。元の世界において守護者とは、確か。
「ドラゴンみたいなもの……ってことか?」
「可能性はあるだろ? 俺たちを襲ってきた理由も『異物だから』って説明もつくしな」
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