巨大ソイルゴーレム

「しかし、魔王ですか。フフッ」


 面白くてたまらないといった風に笑うルヴに、キコリは疑問符を浮かべる。

 今の話の何処に面白い部分があるか分からなかったからだが、それを聞く前に新しいソイルゴーレムたちが現れる。


「またか! この辺が住処なのか⁉」

「さあな! とにかくぶっ倒、うおおおおお!?」


 キコリがルヴの斧を、そしてアイアースが槍を構えると同時に真下から現れた巨大な手がアイアースを掴んでキコリを跳ね飛ばしながら巨大なソイルゴーレムの姿を形成していく。それは通常のソイルゴーレムと比べてもかなり巨大で、アイアースはチッと舌打ちをする。こんなものは、すぐに抜け出してやる。

 そう考えて……しかし、動けない。ドラゴンとしての力を十全に発揮できない此処では、単純な力でも元の通りにとはいかない。ギチギチと自分を締め付ける巨大な腕にアイアースは僅かな焦りを覚えると同時に、疑問も浮かんでいた。

 こいつは、なぜ自分をすぐに握りつぶそうとしないのか。その答えは、巨大ソイルゴーレム自身から示された。


「コ、コロス。ウゴク、コレ、コロス」

「こいつ等! 人質でも取ったつもりか⁉ そんなもんはなあ……!」


 全部ブッ殺してから考えればいい。どうせ俺様はそう簡単に死なない。キコリもそう考えているはずだと、視線を向けて。焦ったような表情で動けないでいるキコリを見てしまう。


「効果抜群かよ! このバカ!」

「仕方ないだろ! お前を見捨てられるか!」

「うるせー! このクソバーサーカー! 得意の考え無しはどうした!」

「俺だって色々考えてる!」

「いいからやれ! 殺れ! それから考えろアホが!」


 叫んでいたアイアースは、キコリの手から斧が消えていることに気付く。一体いつから。いや、それよりも。あの斧が消えたということは。


「お気づきになられましたか」


 ゾンッと。ルヴの斧がアイアースを掴む手に突き刺さる。同時に腕の力が緩み、アイアースは素早く拘束から逃れルヴの斧を掴む。空間移動魔法。その存在を思い出したからだ。そうでなくとも、こいつは飛べる。ならばこれが正しい。


「私に触れないでください」

「うるせー飛べ!」

「やれやれ」


 アイアースの感覚が遮断されたのは一瞬。その姿は次の瞬間にはキコリの近くへと転移してきており、その場所に向けて巨大ソイルゴーレムは腕を振り下ろしてきている。

 けれど、そんなもの。恐れるまでもない。


「皆、頼む」


 キコリの鎧から一斉に放たれた火球が巨大ソイルゴーレムを押し戻し、拳が空を切る。


「ヌ、オオオオ⁉ ヤレエエエエ!」


 掛け声と共に他のソイルゴーレムたちが一斉に襲い掛かってくる。だが、同時にキコリはフェアリーマントを発動し巨大ゴーレムの身体を飛び跳ねるようにして登って行った。

 そうして、その頭上で斧を突きつける。


「動くな! こいつを殺すぞ!」

「あの野郎……そのままやり返すってか」


 それを下から見ていたアイアースは「やるじゃねえか」と、少しばかり嬉しそうであった。

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