ドンドリウスの玩具みたいなもん

 そして、キコリとアイアースの……いや、そこにレルやルヴたち、レルヴァも加えた帝都ハルコネンへの旅が始まった。

 どうしようもないくらいに荒野ばかりが続くこの大地は、世界が滅びかけているということなのだろうか? それとも、来る再生の日への準備期間なのか。それはキコリには分からない。

 しかし……1つ分かることはあった。


「来ます。警戒を」


 ルヴの言葉にキコリたちは武器を構え周囲を見回す。それから僅かな時間もたたない間に地面が揺れ、何かが地面から盛り上がるようにして発生する。それは……間違いなく土のゴーレム、ソイルゴーレムであった。

 現れたソイルゴーレムたちは間髪入れずにキコリたちへと巨大な腕を振り下ろし、キコリたちはそれを難なく回避する。


「ルヴ!」

「承知」


 キコリの掛け声とともにルヴの斧に魔力の輝きが宿り、ソイルゴーレムへと魔力の刃を放つ。

 それがソイルゴーレムの足を断ち切ると同時にキコリの周囲に現れた無数の火炎球がソイルゴーレムを滅多打ちにするように降り注ぎ連続爆発を起こしていく。

 その無慈悲なまでの攻撃の雨はソイルゴーレムに動くことを許さず、そのまま大きな音を立ててソイルゴーレムは仰向けに倒れていく。


「ヴ、ヴヴ……」


 身体を維持できなくなったというかのように崩れていくソイルゴーレムには、やはりコアらしきものはない。キコリの世界のゴーレムのようにコアが本体というわけではない……何か別の理屈で出来ているゴーレムだということだ。もっとも、それが何かまでは皆目見当がつかないのだが。


「なるほどなあ、鎧だの斧だのになっても変わらずレルヴァってわけだ」

「魔力が繋がってる感覚はあるんだけどな。でも俺が魔法使うより使ってもらった方が色々と……な」


 キコリがレルヴァたちの代わりに魔法を使ってもいいが、折角なのでもっと色々な戦術を試したいというのもある。此処から帰って魔王を相手にするにしても、ルヴたちの豊富な魔法は役に立つ。問題は、あの洗脳じみた魔法だが……。


「なあ、ルヴ。本当に『魅了』は効かないのか?」

「主よ。何も問題ありません。私たちは生命体に見えるかもしれませんが、主に帰属する存在です。主がその魅了とやらをされなければ、何の問題もございません」

「……そういうものなのか?」

「知らん。ドンドリウスの玩具みたいなもんなんだろ」


 アイアースにそう言われるとキコリとしても納得できる気はする。アレも確かに魔王の魅了は効かないだろう。もっとも……ルヴたちと比べれば、玩具のようなものであることは否めないのも事実ではあるのだが。

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