モノが違います
「……まあ、いいけども」
それについては今更だし、キコリとしては別に断る理由もない。ないが、疑問点もあるにはある。
「いいんだけど、もうレルが鎧になってるのにどうなんだ?」
「問題はございませんよ。私たちはもとよりゼルベクトの内より生まれしもの。鎧となって混ざったところで何の問題もございませんし、個を失うこともございません」
「まあ、そう言うなら俺としてもいう事はないな」
その言葉を聞いて我先に集まってくるレルヴァたちに囲まれながら、キコリはレルヴァたちと1人1人繋がり……そのすべてを鎧へと変えていく。
鎧に加えるたびに鎧の強度が増し、その姿が僅かながら変わっていくのがよく分かる。
そうして全てのレルヴァを鎧に吸収したとき、ルヴが「さて」と声をあげる。
「では、ここらで私を貴方の武器として頂きたいのですが」
「え?」
「武器です。貴方の先程のナマクラ斧は壊れてしまいましたでしょう?」
「それはまあ……そうだけどな」
確かに先程の斧は完膚なきまでに壊れてしまったし、同じものを武器屋から持ってきてもここぞというときにまた壊れてしまう気がする。そして思い出せる限りでは先程の武器屋にマジックアイテムの斧はない。
そうなると……レルの申し出は渡りに船ではある。ある、のだが。
「……それなら、さっき言ってくれれば何人かは斧になったんじゃないか……?」
「新たな主の槍となる栄誉を有象無象に与えたくはありませんので」
あまりにも自分の都合に忠実なルヴの言葉にアイアースが呆れたような顔で「そんなことだと思ったぜ……」と呟いているが、実際アイアースはレヴが鎧がどうのと言い出した時点で気付いており、「こいつ単独で斧になろうとしてやがるな」とは思いつつも別にキコリに不利になる事案ではないので黙っていたのだ。
しかし残念なことにキコリとレルを含む他のレルヴァたちは全く気付いておらず抗議の意思をカタカタ震えることでレルヴァたちが示していたが……ルヴは知らんぷりであった。
とはいえ、キコリとしても「ルヴは頭がいいな」と思うくらいであり、溜息をつきつつも異論はない。
「ルヴ、斧になったら喋れるのか? 案内してもらえないと困るんだが」
「問題ありません。こうして会話が出来ているでしょう?」
「……レルも他のレルヴァも鎧になったら喋らないんだが」
「モノが違います」
キコリとしては「そこまで言うのであれば」というところではあるので、差し出されたルヴの手をとり斧をイメージする。そうして出来たのは。
「ね? 私の言った通りでしょう?」
「……だな」
やはりレルヴァをイメージした、ルヴの声で喋る斧であった。
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