お前がそこまで望むなら

 実際に指揮個体がいるかもしれないとなれば、大分モチベーションも変わってくる。

 そしてレルヴァの本拠地があるとすれば、一定以上に広い場所だと考えるのが正しい。

 となれば……候補となる場所は、そう多くは無い。そのうちの1つである「神殿」には、もう居ないことは確認できている。


「で、何処行くんだキコリ」

「城に行こうと思う。この町を潰す命令を受けてたんなら、そこを占拠するだろうしな」

「よし、決まりだ」


 幸いにも、城らしきものは此処からも見えている。迷うことはないだろう。

 2人は城に向けて歩き出し……その背後からレルヴァが低空飛行してついてくる。

 ちなみに、キコリの兜は抱えたままだ。まあ、キコリたちに敵意は無い、というかなついているようなので問題はないが、兜はどうしても返してくれない。


「なあ、レル。それ、返してくれないか?」

「ギイイ……」


 キコリが手を伸ばすと、レルヴァは嫌だと言うように兜をその長い腕でヒョイと持ち上げてしまう。まあ、理屈で言えばレルヴァを武具にも出来るはずなのだが……。


「なあ、なんだレルって。名前か」

「ああ。ないと不便だろ」

「いやまあ、好きにすりゃあいいけどよ」

(こいつ、自分に好意向けてくる相手に弱すぎねえか……?)


 別にキコリが好きにすればいい話ではあるが、同じドラゴンとしては心配な話だとアイアースは思う。


「それよりアイアース。兜が無いと不安だし、レルを兜にしてみようと思うんだが、こういうのってどうすりゃいいんだ?」

「知るかボケ。そういうのはドンドリウスに聞けってんだ」

「ドンドリウスか。そういえばドンドリウスもソイルレギオンも『そういうの』が出来たんだから、何か特別な力ってわけでもなさそうだよな」

「そのソイルなんとかは知らねえけどよ……」


 アイアースに「そういえばそうだったな」などと言いながら、キコリはあの2人のことを思い出す。ソイルレギオンは「生きている鎧」を作り出し、そこに意識を移すことが出来ていた。

 そしてドンドリウスに至っては人間そっくりの人形を作りだしていた。そして……その「人形」は受け答えもキチンと出来ていた。レルヴァがそれと全く同じとは思わないが、つまりここで大事なのは「魔力で構成されたものは意思があろうと弄ることが可能」ということだ。

 ……いや、しかし。そうであるならば。


「レル。お前がそこまで望むなら、やってみようと思う。上手くできるかは……分からないけど」


 キコリは言いながら、レルに手を伸ばす。するとレルは……兜を片手に持ち替えて、キコリの手をとる。


「……なあ、まだ頑なに兜を離さないのは何だと思う?」

「お前に信用がないんじゃねーの」

「そうなのかなあ……」

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