キコリの評価

 だとすると、この世界の状況にある程度説明がつく。

 レルヴァは恐らく、破壊神がいなくなったことで指針のようなものがなくなったのだろう。

 まあ、当然だ。レルヴァが破壊神の眷属であり武器であるならば、命令した以上に大きく動くことは基本的に有り得ない。

 つまり……此処に居るレルヴァは破壊神の命令を未だ実行中ということになる。ならば、その内容は何か?


「そうか……分かったぞ」

「あ? 何が分かったってんだ」

「ギイ」

「レルヴァたちは、この町の人間を滅ぼすことを命令されてたんじゃないか? だからこの町に踏み込めば攻撃するし、そこから先には進まないんだ」


 そう、だからこそ生き残った人間たちはこの町にやってくる。此処から逃げても、自分たちの町までは追ってこないことを気付いているからだろう。

 レルヴァを倒す力もないのにこの町に来ていたのも、逃げることさえ出来ればどうとでもなるからに違いない。

 しかしまあ、そうなると人類の生存域というものは本当に限定されていることになるが……まあ、そこについては別にどうでもいい話だ。キコリはこの世界の人間に関わるつもりはない。


「まあ、それが分かったとしてだ。意思疎通が出来ない話は変わらねえぞ」

「いや、それについてもある程度の目安はついてる」


 そう、レルヴァはデモンと違い大地の記憶が暴走した存在ではない。

 ならば、レルヴァが突然現れる現象は一体何なのか?

 その答えは、破壊神自身に……そして、レルヴァに交渉をしようとしていた理由にあった。

 

「レルヴァは少なくとも、どこか別の場所に一瞬で移動する能力を持ってる。なら、何処かに本拠地がある」

「まあ、そうだな。で? それは意思疎通が出来る理由にはならねえのは分かってるよな」

「ああ。レルヴァは何処かから出撃していて、少なくとも出撃ポイントを絞れる存在がいる。それはもしかすると、通常のレルヴァより高い知能を持つ個体かもしれない」


 キコリにそう言われてアイアースは「ああ、なるほどな」と頷く。

 確かにその通りだ。今まで気付かなかったのが不思議なほどに簡単な理屈だ。

 破壊神ゼルベクトは世界を渡る能力を持っている。そしてその眷属であるレルヴァにその能力を期待していたのが元々の話だ。

 空間移動については、アイアースからしてみれば「その程度は出来なければ困る」という程度の話でしかなかったが……それゆえに「本拠地の可能性」については見落としていた。

 いや、違う。一部の例外を除き、他の生き物に然程の執着をもたないドラゴンの傲慢さゆえに見逃していたのだろう。

 だから、ここにきてアイアースはキコリの評価を少し変える。少なくとも、キコリはバカだが馬鹿ではない。いつまでも人らしさというものに執着する、変わった「仲間」だ。


「よし、話は分かった。じゃあ、その指揮個体を探そうじゃねえか。ククッ……おいおい、随分と話が明るくなってきたじゃねえの」

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