説明がつかない部分
キコリの、そんな問いかけにレルヴァは神妙な顔で答えを返す。
「ギイイイイ……」
「……アイアース」
「俺様に聞くんじゃねえよ。分かるわけねえだろうが」
「だよな……」
そもそも意思疎通が出来ているのかどうかすらよく分からない。
行動に関しても、本当に理解できているか不明だ。兜の件だって、兜になりたいではなく兜が欲しい、かもしれないし意思疎通が出来ていないというのは本当に問題が多い。
「どうにかして意思疎通できないか……? このままじゃ話の出来ない仲間が増えただけだぞ」
「ギイイイイ」
「って言ってもなあ……それをどうにか出来そうなのはお前くらいのもんだが」
アイアースにそう言われれば、キコリとしてもその通りだとしか言えない。
レルヴァが破壊神ゼルベクトの生み出したモノであることは確定した。
そしてレルヴァがキコリの言うことを聞いたことからしても、今のレルヴァに明確な指揮系統のようなものはなさそうだ。
だが……集団行動をしている以上はリーダーがいる可能性は高い。勿論そんなものはいなくて、この世界のあちこちで散発的に出てきているだけかもしれないが……それでも、いる可能性はあると。キコリはそう考えていた。
(そうだ。そうでなければ説明がつかない部分がある……)
それは、この世界で会った人間たちのことだ。彼等がこの町で何をしようとしていたかは分からないが、少なくともアレが最初ということはないはずだ。
何度も此処に来て、その度にレルヴァと戦っているはずだ。
そしてハッキリ言ってキコリの見た限りでは、この世界の人間はレルヴァに全然敵わない。
あの2人がキコリとアイアースを見て言っていた「あんな強者がまだ居たのか?」という言葉が、その何よりのヒントだ。
少なくとも弱体化した今のキコリとアイアースが「いるのが驚きなレベルの強者」に見えている時点で、この世界の人々の強さというものが見えてしまう。
恐らくは破壊神との戦いで強者は死んでしまったのだろうから、キコリとしては何も言えない部分はあるのだが……そこは今は気にしても仕方がない。
大切なのは「この世界の現状では、人間がレルヴァに勝てる要素がない」ということだ。
そんな状況で「裏切り者を吊るす」程度には同じ人間の仲間を減らすことに躊躇いがない。
普通であれば人間を減らす余裕などないにも関わらず、だ。
それが何かしらの余裕の表れなのか、それとも自分たちで破滅に向かっているだけなのかは分からない。
しかし、前者だとしたら……人間の町への侵攻は発生しておらず、安全地帯のようになっているのではないか。キコリは、そう考えていた。
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