正解であり間違い
「いや、構わない」
「構わないって、お前……」
「ていうか、レルヴァと交渉なんて出来るか分からないしな」
そう、マトモに会話が出来ないのだ。交渉などどうやってやればいいのかも分からない。
分からないが……それしか手段がない。
レルヴァが破壊神の眷属のような存在であるならば、レルヴァもまた世界移動の能力を持っている可能性は高いのだから。
「レルヴァは俺たちを見て襲い掛かってきた。なら、普通にやっても交渉に応じてなんてくれないだろうけど……」
「けど? 何かあるのか?」
「……いや。たぶんだけど、やりようはある」
そう、キコリとしては出来るかどうか分からない……やったことなどないからこそ賭けになるが、それでも考えはある。キコリが破壊神の転生した姿であるというのであればこその手段。
上手くいっても、上手くいかなくても此処で悩んでいるよりは状況が動くだろう。
「まずはアルヴァを探そう。それで試してみたいんだ」
「よし、なら早速だ。行くぞ」
方針さえ決まれば、こんなところに留まっている理由もない。
祈りの間を出て、通路を歩いてキコリたちは神殿の外に出る。
すでに日は暮れ始めていたが、探索に問題はない。いよいよとなれば、どこか適当な建物にお邪魔すればよいのだから。どうせ、この町には誰もいない。
「なんなら城に行ってみるか?」
「それもいいな」
アイアースの軽口にキコリがそう応え、歩いていく。
人の居なくなった滅びた町には風の音と2人の声しかなくて。世界の終わりの光景というものがどんなものかを2人に教えてくれる。
そして。沈む夕日のその方角に、1体のレルヴァが現れる。
「ギイイイイイイイ……」
「アイアース。斧を預かっててくれ」
「おう」
キコリは素手で上空のレルヴァへ向き合うと、思いっきり声をあげて叫ぶ。
「レルヴァ! お前たちに聞きたいことがある!」
「ギイイイイイイ……」
「俺は破壊神の生まれ変わりだ! お前たちと交渉をうおっ!?」
レルヴァの魔法をキコリは回避し「やっぱ言葉の説得は無理があるか……」と呟く。
「おいコラ、やりようってソレか!? ぶっ飛ばすぞ!」
「一応やってみただけだ!」
アイアースのヤジにそう返しながら、キコリはフェアリーマントを発動させる。
とにかく、レルヴァがあんなに遠くに居てはどうしようもない。
だから、キコリは軽くなった身体で壁や屋根を足場に跳んで、そのままレルヴァのいるところまで飛ぶ。
「ギイイイイイ!?」
「レルヴァアアアアアアア!」
キコリが比較的最初の頃から使えた魔法……「破壊魔法ブレイク」。
あの時キコリは、前世の知識があったからこそ習得するに至ったのだと考えていた。
だが、それが正解であり間違いであったのならば。
ブレイクを使えた理由が、破壊神の生まれ変わりだったならば。
レルヴァの放った火球の魔法へと、キコリは手を突きだす。
「ブレイク」
唱えたその魔法が、レルヴァの放った魔法を「破壊」した。
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