お前はそんなもんじゃねえのに
「そういうことだな。まあ、アレは手先ってところだろうが……破壊神もいねえって考えれば、思い当たる部分もあるにはある」
「……何に思い当たったんだ?」
「お前は心当たりねえか? どっからともなく現れる連中によ」
何処からともなく現れる連中。言われてキコリは「確かに覚えがある」と思う。
この世界の話ではない。そう、元の世界の話だ。何処からともなく現れて。全生命体の敵で。
そして、同じ個体の群れに見える連中。それは、つまり。
「デモン……! そういえばアレは世界の歪みって話だったよな」
「おう。だがそもそもの話で言えば『歪み』ってなあ何だ? ってことだよ。直せない理由は何処にある?」
その答えは、恐らく簡単だ。神々が健在であるのに、世界の歪みを直せないその理由。
それは、以前のドンドリウスの言葉でも裏付けが出来てしまう。
「破壊神の力……か。それが世界の歪みの原因ってことか?」
「確証はねえがな。しかし、色んなことに納得がいく。だったらどうすりゃいいのかって分かんねえのも含めてな」
そう、確かに納得はいく。破壊神が倒れてなお残っている「破壊神の力」という異物が世界の正常な運行を邪魔している。充分に有り得る話だ。
直せないのであれば、何かあるごとに歪んでいく……それもまた当然の話だ。
ならばどうするか。「出来る限り歪まないようにする」が答えになるだろう。
(……シャルシャーンがトルケイシャの時に顔を出したのはそれが理由か? 俺を助けたのはその方が便利だから……って可能性もあるか)
キコリの見た感じ、シャルシャーンには「情」とか、そういう類のものは一切ない。
以前シャルシャーンの欠片の1つに迷惑をかけられた時にも、本人が出てきたのは全部終わった後だった。
キコリのことをどう考えているのか一番読めない相手がシャルシャーンでもある。
「あ、いや。これはまた別の話だな……」
「何がだよ」
「シャルシャーンって結構信用できないよなって考えてた」
「別の話過ぎるけどまあ、俺様もそう思う。つーか余計なとこに思考飛ばしてんじゃねえぞお前」
「ごめん」
大きく溜息をつくと、アイアースは「難しい話じゃねえんだよ」と頭を軽く掻く。
「俺様が最終手段だって言ってんのはな、お前にとってあんまり触れたくねえ部分なんじゃねえかと思ってるからだ」
そう、アイアースが最終手段と言った理由は、主に2つ。
1つ目は、相手にマトモな交渉が出来るのか、出来るとしてその方法がサッパリ分からないこと。
そして、2つ目は。
「お前に『破壊神として』レルヴァどもと交渉しろって言ってんだ。お前はそんなもんじゃねえのに、それを装えって言ってんだ。こんな勝手な話はねえだろうが」
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